
昭和48(1973)年、念願だった「民宿 はちのこ」をオープン。夫のお父さんが「八郎」という名前で、小さい頃から地域の人に「八郎のところの子ども、八の子」と呼ばれていたのが由来です。地元の人間にとっては馴染みのある、楽しいネーミングで気に入っています。
夫の父、母、子ども3人とともに田畑で農業を営みながら民宿をやるのは大変でしたが、楽しかったですね。最初の頃はこちらも経験不足で、逆にお客さんが手伝ってくれたりしてね。それでも畑で採れた野菜やお米、果物だけはたっぷり用意して、お腹いっぱい食べてもらいました。
地域に昔から伝わっていた根曲がり竹を使った「竹細工」や、オヤマボクチをつなぎにする「須賀川そば」の体験を考えたのも夫です。「自分たちだけが儲かるんじゃなくて須賀川が元気にならなきゃいけない」と、地域全体を巻き込んで役場にも掛け合いました。おばあちゃんに教わりながら、昭和60(1985)年頃から受け入れを始め、新聞に取り上げられたこともあって人気となりました。
平成元(1989)年におばあちゃんが亡くなり、翌年、夫が急死してからも、皆に支えられて、そば打ち体験は続けてきました。私の打つ「須賀川そば」は、地元の玄そばを自分で挽き、オヤマボクチをつなぎにする十割そばです。オヤマボクチ特有のコシの強さが特徴で、須賀川地域に伝わる伝統的なそば打ちを教わりたいと、多くの方に呼んでいただきました。コロナ禍で完全にストップした時期もありましたが、最近は海外の方にそば打ちを体験してもらうことが増えましたね。言葉は分かりませんが、単語だけでもなんとか通じるものです。一期一会でお会いする人たちから、知らない世界を教えてもらえるのも楽しいですよ。いつでもおもしろがるのが私の信条。これからもたくさんの人と出会い、広い世界を楽しみながら、須賀川そばの美味しさを伝えていきたいと思っています。