• 今の自分が
    学生たちと共に在ることで
    次の新しい循環の
    始まりになれば嬉しい。

      • 信州大学 キャリア教育・サポートセンター
        助教

        勝亦 達夫

        Tatsuo Katsumata


      • 信州大学
      • 松本市旭3丁目1番1号
      • 0263-37-3348
      • https://www.shinshu-u.ac.jp/

長野との関わりは、
大学の学びから始まった。

 出身は静岡県。東京の大学に進学した自分が、「長野」とこんんなにも深く、長く関わるようになった最初のきっかけは、大学院での「学び」でした。
 在籍していたのは東京理科大学建築学科、川向正人教授の研究室です。そこで専攻していた歴史意匠やまちづくり研究の一環として訪れたのが、長野県「小布施町」でした。小布施町は当時、まちづくりや町並み修景事業で注目されていて、調査に訪れるたびに新たな発見があって楽しかったですね。
 そんな中、小布施町の市村良三町長から「小布施に大学を作りたい」という話があり、教授が「それでは研究所を作りましょう」と発案。自分も「東京理科大学・小布施町まちづくり研究所」の立ち上げメンバーとして、参加することになったんです。
 そこからは、博士課程の研究テーマとして、また研究所の研究員として、小布施のまちづくりにどっぷりと浸かっていきました。調査・研究だけでなく、実践に結び付けて自ら動くことができる、というのは非常に貴重な経験であり、活動を通してさまざまな人と出会い、教えられ、挑戦できたことは、自分にとって大きな糧となりました。
 5年前に信州大学のキャリア教育・サポートセンターの公募に応募したのも、自分のフィールドを更に広くすることで、これまでのキャリアに新たな思考や手法をインプットし、より広い視点から地方創生や地域活性のために何ができるか、挑戦してみたいと思ったからです。

学生たちと共に
地域の課題を追い続けたい。

 キャリア教育・サポートというと、単なる就職支援という印象が強いかもしれませんが、私の考えるキャリア教育とは、学生たちが自らのキャリアビジョンを早くから思い描く、もしくは思い悩む「機会」を与えることにあります。自分も大学の時に「小布施」というフィールドを見せられていなければ、たぶん東京に就職していたでしょう。なぜならそれが当然だと思い込んでいたからです。でもそれは知らないだけ。自分の住む地域や企業を知り、その課題に関わっていくことで、自ら考え、自ら発信し、人とつながり合うことの大切さを学ぶ。そうした機会や経験を通して、学生たちは初めて、「社会」や「仕事」をリアルに捉え、考えることができるんだと思います。
 信州大学が新たに取り組み始めたキャリア教育に「全学横断特別教育プログラム」があります。全学部の学生が対象のプログラムは、自ら手を挙げた希望者が受講するものです。大きく3つのコースに分かれており、私はそのうちの「ローカル・イノベーター養成コース」で学生たちと共に地域課題を捉え、解決のためのプロジェクトを一緒に立ち上げ実践しています。
 今年の7月12日に長野市の七瀬に新たに立ち上がったイベントスペース「ENKAI─縁会─」も、未使用のオフィス空間をイベントスペースとしてリノベーションし、場の運営は学生たちが行います。中心となる学生は養成コースの2期生。3人の学生が「2nd Canvas」という学生団体を立ち上げ、学生と地域、学生と企業、学生と学生をつなぐ「場」の運営を始めました。立ち上げまでも大変でしたが、大切なのは「中身」です。多くの人が興味を持ち、集うために何をしていくのか。「仕組み」がないと続いていきません。彼らの挑戦は、これからが本番です。
 それでも、最初はたった3人から始まったプロジェクトは、やがて彼らの熱量が周りの学生たちに伝播し、参加する学生が増えてきています。こうしたムーブメントがどんどん生まれてほしい。そうして今度は彼らが社会人になった時に、後輩たちの活動をサポートできる人間になってほしいと思います。次につながる循環が生まれることを今から期待すると同時に、自分自身も学生たちと共に、常に新たな課題に挑戦していきたいと思っています。

(2019年9月号掲載)