キャリア教育・サポートというと、単なる就職支援という印象が強いかもしれませんが、私の考えるキャリア教育とは、学生たちが自らのキャリアビジョンを早くから思い描く、もしくは思い悩む「機会」を与えることにあります。自分も大学の時に「小布施」というフィールドを見せられていなければ、たぶん東京に就職していたでしょう。なぜならそれが当然だと思い込んでいたからです。でもそれは知らないだけ。自分の住む地域や企業を知り、その課題に関わっていくことで、自ら考え、自ら発信し、人とつながり合うことの大切さを学ぶ。そうした機会や経験を通して、学生たちは初めて、「社会」や「仕事」をリアルに捉え、考えることができるんだと思います。
信州大学が新たに取り組み始めたキャリア教育に「全学横断特別教育プログラム」があります。全学部の学生が対象のプログラムは、自ら手を挙げた希望者が受講するものです。大きく3つのコースに分かれており、私はそのうちの「ローカル・イノベーター養成コース」で学生たちと共に地域課題を捉え、解決のためのプロジェクトを一緒に立ち上げ実践しています。
今年の7月12日に長野市の七瀬に新たに立ち上がったイベントスペース「ENKAI─縁会─」も、未使用のオフィス空間をイベントスペースとしてリノベーションし、場の運営は学生たちが行います。中心となる学生は養成コースの2期生。3人の学生が「2nd Canvas」という学生団体を立ち上げ、学生と地域、学生と企業、学生と学生をつなぐ「場」の運営を始めました。立ち上げまでも大変でしたが、大切なのは「中身」です。多くの人が興味を持ち、集うために何をしていくのか。「仕組み」がないと続いていきません。彼らの挑戦は、これからが本番です。
それでも、最初はたった3人から始まったプロジェクトは、やがて彼らの熱量が周りの学生たちに伝播し、参加する学生が増えてきています。こうしたムーブメントがどんどん生まれてほしい。そうして今度は彼らが社会人になった時に、後輩たちの活動をサポートできる人間になってほしいと思います。次につながる循環が生まれることを今から期待すると同時に、自分自身も学生たちと共に、常に新たな課題に挑戦していきたいと思っています。