その後3年ほど修業した頃に、社長から「ながの東急店の店長をやってみないか」と打診を受けました。最初は「自分は職人になりたいし、店長なんて無理です」と断っていたんですが、「厨房がある店舗だから、菓子も作れるから大丈夫」と口説き落とされました。
店長になると、ただお菓子を作っていればいいというわけにはいかず、最初は戸惑うことも多かったですね。でも、「厨房があるということは、出来立てを提供することができる」ということに気づいた時、一気に視野が広がりました。そこから「店舗で作ってその場で提供する」ながの東急店だけの限定商品が生まれたんです。
金曜日の朝限定の「朝どら」は、生地作りから厨房で行い、一枚一枚丁寧に手作業で焼いています。焼きたてのどらやきの皮は外側がカリッ、サクッ、内側がもちっとしていて、いわゆるどらやきの皮とは食感が違います。餡は丹波の大納言を用い、専任の職人が丹念に炊いたものをたっぷりと挟み込みます。出来立ては袋に入れずに試食に出ますので、ほんのり温かい「朝どら」を、ぜひ一度味わってほしいですね。
また、小さくて可愛らしい「門前おはぎ」も、ながの東急店限定です。毎朝厨房で、野沢温泉村のもち米「もちひかり」を蒸かして程よくつぶし、餡で包んでいきます。種類はつぶあんをはじめとする定番4種と期間限定1種の計5種類。できるだけ素材を活かし、一度にたくさん作らずに、店の売れ行きを見ながら厨房で少しずつ追加して作っています。これも、出来立ての味を楽しんでほしいから。時間が経つと硬くなる、昔ながらのたむらの味を堪能してほしいと思います。
「その場で作って提供する」ことは、職人として菓子を作ってきた自分だからこそできることであり、店舗運営やお客様の声を直接お聞きするという経験も、職人としての成長に繋がっていると感じています。これからも今の自分にできることをどんどん吸収して、職人として成長していきたいと思います。