• 私たちは、生きている限り、日々誰かと会い、何かを成しています。
    その時々で、自分でも思いも寄らないことに巻き込まれたり、
    大きな壁が立ちふさがることもあるでしょう。
    そんな時に、法律という視点を知っておくことで自分を守ることができます。
    夜明けの翼法律事務所の板谷健太郎先生にお話を伺いました。

誰もが経験するかもしれない
交通事故

 

 今回は、私の事務所でご相談が多い交通事故に関する内容や手続についてご説明します。

(1)具体的な流れとポイント

 交通事故が起こってしまったとき、まずはけが人がいるかを確認し、けが人がいるなら救護し、救急車を呼ぶ必要があります。また、人身事故ではなく物損だけの事故の場合にも、警察に連絡して事故処理をしてもらいます。人身事故の場合には現場で実況見分を行うことになります。物損だけの場合には警察官は現場には来ず、双方の車両で警察署に向かい、事故受付をしてもらう場合もあります。
 このとき重要なのは、些細な事故でもきちんと事故受付をしてもらうということです。事故受付をしてもらうと、後日、交通事故証明を発行してもらうことができ、そもそも事故があったか否かという点で紛争になることを避けられます。また、実況見分の際は、自分が認識している事故状況についてきちんと指示説明しましょう。そうでないと、自分の意に沿わない実況見分調書ができあがってしまいます。
 また、双方の車両で加入している自動車保険があるか、どこの保険会社かを確認します。追突のような、明らかに一方的な被害事故であれば、通常は加害者側の保険会社と被害者とのやりとりとなりますが、このような場合でも、被害者側の保険に「人身傷害補償保険」という特約がついていれば、その保険を利用して進めることも可能です。このあたりは、事故に遭ったときにまずご自分の保険会社に連絡をすれば、丁寧に教えてくれます。弁護士費用特約がついていれば、早期に弁護士に依頼して代理人として動いてもらうことも可能です。
 また、事故現場で過失の有無や過失割合についての話が出ることがありますが、そのような内容は後日冷静に話し合うべきですので、事故現場の動揺しているところで何かの合意をしたり念書を書いたりしないようにしましょう。また、後日のためにスマートフォンなどで事故直後の車両の状態や破片の散らばり方などについて写真を撮っておくと、役に立つこともあります。ドライブレコーダーの画像があれば、なおよいです。

(2)損害の内容

 交通事故の損害には、怪我をした、命を失ったなどの人身損害と、車が壊れた、レッカー費用や代車費用がかかった、買って間もない車が事故で査定が落ちたなどの物損に分けられます。人身損害には、治療費や入通院の交通費、休業損害や慰謝料、後遺障害が残ってしまった場合の労働能力喪失による逸失利益(将来得られるはずであった収入が減額してしまうという損害)があります。
 このうち、慰謝料の額については、ある程度定額化されています。また、後遺障害については、自賠責保険を扱う損保料率機構(損害保険料率算出機構)で後遺障害の該当性や等級について審査がなされます。
 これらの損害については、弁護士などに相談しながら検討することもできるでしょう。

(3)紛争解決のための手続

 いくつかの手続をご紹介しますが、それぞれメリットとデメリットがありますので、それを考慮しながら選択していくことになります。ただし、交通事故は双方に言い分があったり双方に過失があったりする場合が多くあります。多くの事例で争点となる損害賠償の額や過失割合というものは、どちらが正しいとも言い切れない場合も多くあります。そのため、最終的には話し合いで解決することを目指しましょう。


●示談交渉
 相手方と書面等を用いて交渉をするもので、代理人弁護士を付けて交渉する場合もありますし、示談代行ができる保険会社が代わりに行うこともあります。相手方と内容について合意できれば、通常は示談書(和解書)や免責証書等の書面を交わすこととなります。
 示談交渉は解決が早く、一番理想的な解決方法ですが、相手方が示談書どおりに履行しない場合には、改めて裁判をする必要が出てきてしまうというデメリットもあります。


●調停
 裁判所において、裁判官と民間から選ばれた2人以上の調停委員で成る調停委員会が間に入って話し合いを行う手続です。紛争の実情に即した柔軟で妥当な全体的解決が図れ、手続が簡易です。ここで合意したものは「調停調書」という公文書で残りますので、判決と同じ効力があり、相手が履行しない場合には強制執行も可能です。


●訴訟(裁判)
 重装備の司法サービスであり、公平な第三者たる裁判官が客観的な答えを出します。この手続の中でも話し合い(和解)で解決することが多くありますが、最終的に和解ができなければ裁判所が判決を出す、というところが異なっています。しかし、裁判には時間やお金がかかり、また裁判所を説得する作業が中心となりますので、証拠が必要となります。


●ADR(裁判外紛争解決手続)
 私的機関や法令上の根拠を有する公的機関による相談、苦情処理、紛争処理等があります。交通事故の関係では、日弁連交通事故相談センターや交通事故紛争処理センターなどがあり、長野では長野県弁護士会紛争解決センターなどがあります。
 話し合いの手続としてはとても有用ですが、最終的に和解をしても強制力(確定判決と同一の効力)まではありません。合意による自主的な解決を目指すものですので、当事者の対立が激しい場合には使えません。



 次回は、離婚に関する内容や手続について、ご説明します。


(2018年3月号掲載)

夜明けの翼法律事務所

●代表者  弁護士 板谷 健太郎(いたや けんたろう)
 長野県弁護士会所属 弁護士登録番号32683
 弁護士登録平成17年10月4日 司法修習第58期

●業務内容  法律相談 法律事務一般 裁判代理

●安心して相談予約をしていただくため、当事務所では通話料無料の「フリーアクセスひかりワイド」を利用しております。
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