私たちは、生きている限り、日々誰かと会い、何かを成しています。
その時々で、自分でも思いも寄らないことに巻き込まれたり、
大きな壁が立ちふさがることもあるでしょう。
そんな時に、法律という視点を知っておくことで自分を守ることができます。
夜明けの翼法律事務所の板谷健太郎先生にお話を伺いました。
今回は、私の事務所でご相談が多い離婚に関する内容や手続についてご説明します。
(1)離婚には種類があります
①協議離婚
市町村役場に備え付けてある離婚届用紙(1通)に当事者双方及び成人2人の証人の署名捺印をし、市町村役場への届出をすることで成立します。いちばん一般的で手軽な手続です。金銭の支払などについて合意ができる場合には、別途離婚協議書を作るとよいでしょう。
②調停離婚
相手方の住所地又は合意で定める地の家庭裁判所に「夫婦関係調整調停」を申立てます。民間人から選任された2人の調停委員を間に入れて話し合いを行う手続です。
相手が全く出頭しない、あるいは離婚に応じない場合には、調停は不成立となります。相手が離婚等に応じる場合には、調停期日に離婚が成立します。この場合、確定判決と同じ効力が生じます。調停調書の謄本を添付して市町村役場に届け出れば、後日、調停の日に離婚した扱いとなります。
③裁判離婚
夫婦のいずれかの住所地を管轄とする家庭裁判所の判決により、離婚をする手続です。いきなり訴えの提起はできず、まず調停を経る必要があります(調停前置主義)。裁判離婚では、調停と違って民法770条に定める離婚原因のいずれかが必要です。
〈離婚原因〉
1 配偶者の不貞行為
2 配偶者から悪意で遺棄された
3 配偶者の生死が3年以上明らかでない
4 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない
5 その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
このうち一般的に用いられているのは5番目の要件であり、これは諸々の要素を考慮して「夫婦の関係が破綻したとき」に離婚を認める趣旨です。
(2)離婚の際に決めること
交通事故の損害には、怪我をした、命を失ったなどの人身損害と、車が壊れた、レッカー費用や代車費用がかかった、買って間もない車が事故で査定が落ちたなどの物損に分けられます。人身損害には、治療費や入通院の交通費、休業損害や慰謝料、後遺障害が残ってしまった場合の労働能力喪失による逸失利益(将来得られるはずであった収入が減額してしまうという損害)があります。
このうち、慰謝料の額については、ある程度定額化されています。また、後遺障害については、自賠責保険を扱う損保料率機構(損害保険料率算出機構)で後遺障害の該当性や等級について審査がなされます。
これらの損害については、弁護士などに相談しながら検討することもできるでしょう。
(3)紛争解決のための手続
話し合いで解決するにしても、何を話し合うのかを決めておかなければなりません。離婚のときには以下の点を決めることになります。
●氏(名字)の継続をするかどうか
結婚の際に氏(名字)を変更した配偶者は、原則として婚姻前の氏に戻りますが、婚姻後の氏を継続使用することもできます(婚氏続称といいます)。婚氏続称する場合には、離婚の日から3か月以内に届け出なければなりません。
●親権者をどちらにするか
未成年の子がいるときは、必ず親権者をどちらにするかを決めなければなりません。よく紛争となるのがこの点であり、巻き込まれて一番苦労するのは子ども自身です。親権者がいずれになろうとも、両親のいずれも親であることには変わりありません。「大岡裁き」には、2人の女性に子どもの腕を引かせ、子どもが痛いと叫んだのを聞いて手を離した女性を母親と判断したものがあります(旧約聖書にも賢王ソロモンについて類似の記述があります)。親権を選択する際には、子どもの福祉を最優先に考えましょう。
●養育費の支払
離婚しても親の子に対する扶養義務はありますから、親は子が親と同程度の生活ができるように費用を負担する義務を負います。養育費の額については、算定方式について裁判所の算定表が公表されています。なお、離婚の前に別居している場合には、子どもの養育費以外に相手の生活費を「婚姻費用」として支払う義務があり、これについても算定表があります。
●面会交流
離婚後、親権者ではない親が子どもと面会することについて取り決めを作っておくことが必要であり、これについて協議が整わない場合は、家庭裁判所で審判が行われます。裁判所は、親の意見ではなく子どもの福祉を最も優先して考慮しなければなりません。
●財産分与
財産分与が請求できるのは、離婚のときから2年以内です。これは、婚姻期間中に夫婦で築き上げた財産を分割するというものです。婚姻とは関係のない方法で取得した財産(たとえば相続した財産など)は、分与の対象とはなりません。
●慰謝料
相手方の責められるべき行為によってやむを得ず離婚に至った場合、これにより被る精神的苦痛について慰謝料の請求が認められます。相手の不貞や暴力などが典型であり、裁判所が認定するためには証拠がなければなりません。
●年金分割について
平成19年4月1日以降の離婚に関しては、公的年金である厚生年金保険等の被用者年金の分割を可能とする制度が導入されました(離婚分割)。この場合には、年金分割のための情報通知書という書類が必要です(年金事務所にお尋ねください)。年金分割をするためには、離婚から2年以内に手続きをする必要があります。
2回にわたり交通事故と離婚について、説明をしてきました。さまざまな問題でお悩みの方は、法律の視点からその問題について考えてみることで、解決策が見出せるかもしれません。
(2018年4月号掲載)
●代表者
弁護士 板谷 健太郎(いたや けんたろう)
長野県弁護士会所属 弁護士登録番号32683
弁護士登録平成17年10月4日 司法修習第58期
●業務内容 法律相談 法律事務一般 裁判代理
●安心して相談予約をしていただくため、当事務所では通話料無料の「フリーアクセスひかりワイド」を利用しております。
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