• ともに学び
    ともに歩んだこの経験が
    自分たちの未来への
    道しるべとなる。

      • 長野県飯山高等学校
        自然科学部MBR班

        大塚 結愛

        Yua Otsuka


        藤澤 佳美

        Yoshimi Fujisawa


        髙藤 陽菜果

        Hinaka Takato

      • 長野県飯山高等学校
      • 飯山市大字飯山2610
      • 0269-62-4175
      • https://www.nagano-c.ed.jp/iiyama/

地球温暖化という大きな課題に
小さなミドリムシで挑む。

 長野県飯山高等学校は、飯山照丘高校、飯山南高校、飯山北高校の3校が、平成28(2016)年に完全統合した、まだ新しい高校です。「探究科」「普通科」「スポーツ科学科」の3つの科があり、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の認定校として、1年次から課題研究や探究学習など、特色ある学びに取り組んでいます。
 私たちが今、研究・開発しているテーマも、1年生の課題研究の授業がきっかけでした。地球温暖化を防ぐために何ができるのかを考え、光合成をする「ミドリムシ」に着目。2年生から本格的に研究を開始し、葉緑体をもつミドリムシなどの緑藻類を、アルギン酸カルシウムのビーズに閉じ込めた「MBR(ミドリ・バイオ・リアクター)」を開発しました。
 アルギン酸カルシウムは、「人工いくら」の膜の素材というとわかりやすいでしょうか。この膜で作った直径4~5㎜ほどのビーズの中にミドリムシを閉じ込め、さまざまな水溶液で培養し、性質を調べました。その実験の中で、ドライイーストによってMBRの緑色が濃くなることがわかり、培養に成功。光を照射する実験で、ビーズ内でも光合成によって二酸化炭素を吸収することが確認できました。
 これらの研究成果をまとめていくうちに、校内だけでなく、もっと多くの人にMBRを伝えたい、MBRの存在を知ってもらいたいと思うようになって。そんな時、学校に掲示されていた「第19回高校化学グランドコンテスト」のポスターを見て、3人で挑戦することにしたんです。

チャレンジしたことで
自分たちの世界が広がっていく。

 書類選考をクリアし、昨年10月に東京で開催された最終選考会へ。大勢の人に向かって自分たちの研究を発表するのは初めてだったので、本当に緊張しました。最終選考会は10チームで行われたのですが、私たちの発表が一番最後だったんです。先に発表している人たちが質疑応答で苦労しているのを見てドキドキ。でもここまできたんだから思い切ってやろうと頑張った結果、化学未来賞(全国2位)と、日本ゼオン・チャレンジ賞(特別協賛企業賞)をW受賞することができました。そして、台湾で開催される世界大会「台湾国際科学フェア(TISF)」に出場できることになったんです。
 この大会は、台湾の台北にある国立台湾科学教育館が主催する国際的な科学研究コンペティションで、今年は世界30ヵ国、234チームの高校生が、13部門に分かれて研究の成果を発表しました。私たちが参加したのは生化学部門で、11チームのエントリーがありました。1月18日~25日までの8泊9日間、慣れない海外での生活で食事など大変でしたが、刺激的な毎日でしたね。研究発表や質疑応答はすべて英語だったので不安もありましたが、みんなで力を合わせて乗り切りました。
 実は表彰式の時は、みんなちょっと気を抜いていたんです。そうしたら部門1位で呼ばれて。嬉しいというよりもびっくりして慌てて壇上に上がりましたが、メダルの重みに、じわじわと喜びが込み上げてきました。
 今回の挑戦は、これまで人前で話すことが苦手だった自分にとって、非常に良い経験になりました。ひたすら集中し、真剣に研究に打ち込んだことも自信につながりました。たぶん自分一人ではここまで頑張れなかった、この3人のチームだったから頑張れたんだと思います。これからも研究を続け、MBRをもっと多くの方に知ってもらい、興味を持ってもらえるよう伝えていきたいと思います。

(2025年4月号掲載)