長野市伊勢宮に本店を構える「旬彩菓たむら」は、季節の旬、そして人生の折々に訪れる旬を彩るお菓子を作り続けています。大切にしているのは、ともに歩む地元の恵みを活かすこと。長野は美味しい果実や蜂蜜、卵や牛乳、小麦粉やもち米など、素晴らしい食材の宝庫です。そんな恵みをお菓子に込めて、お客様に笑顔をお届けすることが、旬彩菓たむらの願いです。
今回は、甘酸っぱいいちごの栽培に取り組む、長野ベリーファーム代表取締役の岡田敬司さんにお話を伺いました。
いつか農家になりたい。
その夢を叶えて。

りんご農家に生まれ育ち、農業に勤しむ父母の背中を見て育ちました。後を継ぐつもりで大学でも果樹栽培を研究するなど、農業への学びを深めていったのですが、やはり現実は厳しく。であれば学んだことを活かそうとJA全農長野に就職し、農業の技術革新や農業振興に努めてきました。
仕事を通して多くの農家さんと出会う中で「いつかは自分も農業を」と思っていた頃、JAながので運営している「アグリながぬま」から、裏手にあるいちごハウスの借り手が1人辞めるので誰かいないかと相談されて。これはちょうど良いタイミングだと50歳で早期退職し、平成21(2009)年10月に長野ベリーファームを創業。ハウスを借り、農家として歩み始めました。
創業当初は、いちごを5反歩、トマトを1反歩から始め、徐々に規模を拡大。現在では、いちごを7反歩、トマトを8反歩ほど栽培しています。いちごは、「章姫」「紅ほっぺ」「のぞみ(スターナイト)」と、夏いちごの「すずあかね」の4品種を育てています。冬いちごは9月に植えて12月から6月まで収穫でき、夏いちごは7月から11月まで収穫できるので、1年を通していちごを楽しんでいただけます。いちご狩りもやっていますので、ぜひ美味しいいちごを食べにきてほしいですね。
多くの人に助けられて
復活できたいちごを届けたい。

創業から10年経った令和元(2019)年10月13日、台風19号による千曲川の決壊によってハウスが土砂に埋まり、約3、000本のいちごの苗がダメになりました。1億円以上の損害に打ちのめされましたが、多くのボランティアさんが2ヶ月以上かけてハウスの泥出しをしてくださり、また、山梨県にある「三好アグリテック株式会社」さんが、自社で開発したいちごの苗2、500本を、無償で提供してくださったんです。本当にありがたく、皆さんの応援に力をいただいて、もう一度頑張ろうと思うことができました。当時まだ名前の無かったいちごに、復興への希望や望みを込めて「のぞみ」という名前をつけさせていただき、栽培を再スタートさせました。今は「スターナイト」という素敵な名前がつき、全国で栽培されています。
美味しいいちごを育てるには、苗そのものが元気であることが最も重要です。長野ベリーファームでは、いちごの根の活力を維持するためにマイクロナノバブル水で空気を根に送り、元気いっぱいのいちごを育てています。根が元気だと病気にも強く、美味しい実をたくさんつけてくれます。毎朝、真っ赤に完熟した新鮮ないちごをスタッフが1粒ずつ丁寧に収穫して「アグリながぬま」に出荷していますので、産直いちごの味をぜひ味わってみてください。
たむらさんとの出会いは、社長さんからの1本の電話でした。地産地消を目指し、実直にお菓子作りに取り組む「旬彩菓たむら」さんの姿勢に驚きましたね。季節限定の「うららか」や「いちご大福」のほか、将棋の藤井聡太さんが名人戦の時に食べた「フルーツスフレロール」に、自分の育てたいちごが入っていたと思うと嬉しいですね。これからも長野ベリーファームのいちごが、たむらさんの美味しいお菓子を輝かせるよう、頑張っていきたいと思います。