衣料品メーカーとして
ものを大切にする心を忘れず
サステナブルな取り組みを通して
社会を変えていきたい。
2015年の国連サミットで「SDGs」が採択され、2030年までに達成すべき世界共通の目標が示されてから、来年で10年。私たちは、持続可能な社会へと舵を切れているのでしょうか。
このシリーズでは、さまざまな課題解決のために、長野の企業や団体がどんな取り組みを始めているのかをご紹介します。今回はフレックスジャパン株式会社、ひなた工房事業部長の唐木澤さん、コミュニケーションデザイン部責任者の小林さんにお話を伺いました。
創業当時から続く
ものを大切にする心を忘れず。
江戸時代より繊維商を営み、昭和15(1940)年に前身となる北信布帛雑品工業有限会社を設立してから84年。フレックスジャパンはワイシャツの専門メーカーとして、昭和、平成、令和のビジネスシーンを支えてきました。高度経済成長とともに「高原シャツ」というブランドで生産を拡大。製造拠点も国内から海外へシフトし、海外マーケットも視野に展開しています。
自分たちが考える「良いシャツ」をお届けする際、私たちの根底に流れるのは「ものを大切にする心」です。日本人は昔から着物を染め直したり、仕立て直したりと、何度もリメイクしながら最後までものを大切にしてきました。私たちのシャツも着る方が愛着を持って大切に着ていただけることを願って、シャツリフォームを承っています。ワイシャツはどうしても襟やカフス部分から傷んできますが、その部分だけを取り変えることで、もう一度お気に入りのシャツとして着ていただくことができます。高い縫製技術を持った職人がいるフレックスジャパンだからこそできる、古くて新しい提案です。良いもの、愛着のあるものを大切に長く着ることは、暮らしを豊かにすると同時に、環境への配慮にもつながります。今、という時代だからこそ、もう一度「大切に長く着る」ことを、私たちから声を上げていきたいと思っています。
思い出の再生と創出
「おもいでつむぐ」リメイクを提案
日本では年間10億着もの服が着られずに廃棄され、大きな社会問題となっています。気軽に買い替えられる時代だからこそ、衣料品を生業にしている企業として、フレックスジャパンはこの課題に取り組んでいきます。
そのひとつが、昨年夏に福島県双葉町にオープンした「ひなた工房」です。双葉町は東日本大震災による原発事故で大きな被害を受け、2022年8月にようやく一部が避難指示解除となりました。双葉町に戻った方々の、「元に戻すのではなく、新しい町を作りあげていく」という希望と再生に共感し、この場所に衣料品再生事業を起ち上げることを決めました。ここを新たな提案の発信基地として、フレックスジャパンでなければできないさまざまな取り組みを展開していく予定です。
現在、最も力を注いでいる再生事業のコンセプトは「思い出の再生と創出」。単なるリメイクやリフォームではなく、その一着に込められた「思い」に共感し、生まれ変わらせることで思い出とともに次の一歩に進めるような、「おもいでつむぐ」提案をしています。例えば亡くなったご家族の衣服は、着ることはできないけれど、捨てることもできないもの。でも、愛用していたシャツやジャケットをぬいぐるみサイズに仕立て直すことで、いつでもそばに居てくれる存在になり得ると思うのです。悲しみや喪失感に寄り添い、少しでも力になるお手伝いができればと思っています。
このほかにも、応援しているスポーツチームのユニフォームのリメイクやお子さんの学生服のリメイクなど、一人ひとりの人生の思い出に寄り添い、その人の日々がより輝くような提案ができれば嬉しいですね。このほかにも、シャツを仕立てる際に出るハギレを使ったバッグや、ハギレ0%のサステナブルなシャツなど、新たな価値観やサステナブルなファッションを発信することで、社会に小さな変化を起こしていきたいと思います。。
(2024年12月号掲載)