売り場作りの面白さに目覚めた頃、チャンスをいただき海外への出店に携わることになりました。中国や韓国、シンガポールやマレーシア、インド、欧州、アメリカなど、さまざまな国に出店する際に心掛けたのは、「標準化」と「現地化」です。無印良品というブランドとして守るべきラインと、現地の人たちに受け入れてもらうためのインパクトを融合させ、その国ならではの文化を取り入れながら、その国独自の無印良品を築いていきました。約10年間、各国を飛び回りながら感じたのは、無印良品の価値観は普遍的で無限大だということです。国や宗教、イデオロギーを超えたボーダレスな存在として、人間の衣食住を支える水や空気のような存在になり得るのが無印良品だと、改めて確信することができました。
良品計画は2021年に「第二創業」を掲げ、現在、原点に立ち返って2つの使命を果たそうと日々、取り組んでいます。ひとつは、日常生活に必要なものを誠実に開発し、使うことで社会を良くする商品を手頃な価格で提案すること。ふたつ目は、各地域の店舗がコミュニティセンターとしての役割を持ち、地域の方々とともに地域課題に取り組むことで、良い循環や広がりを生み出していくことです。
私自身、この「第二創業」の実現に向け、海外で経験したことを今度は国内に活かしていきたいと、地元である新潟県と長野県の2県で信越事業部を起ち上げ、取り組み始めました。2020年7月にオープンした「無印良品 直江津」は、中心市街地活性化という役割を担い、地域の方たちとの交流の中から、店舗内マルシェ「つながる市」を開催したり、移動式店舗「MUJI to GO」で店舗のないエリアを巡ったりと、上越エリアの拠点として展開しています。
この夏、オープンした長野市青木島の店舗もまた、地域の皆さんとともにさまざまな取り組みを行うことで、コミュニティセンターとしての役割を担う「場」になりたいと考えています。そのためにも、まずは多くのお客様に親しんでいただけるお店に育てていきたいと思っています。