• 農業のため、社会のため、
    そして人のために。
    生命の源である「食」を守り続けていきたい。

    • 松山株式会社
      執行役員 総務部長
      清水 信男さん



 2015年の国連サミットで「SDGs」が採択され、2030年までに達成すべき世界共通の目標が示されてから、来年で10年。私たちは、持続可能な社会へと舵を切れているのでしょうか。
 このシリーズでは、さまざまな課題解決のために、長野の企業や団体がどんな取り組みを始めているのかをご紹介します。今回は、松山株式会社の執行役員であり、総務部長でもある清水信男さんにお話を伺いました。

農業作業機メーカーの
パイオニアとして歴史を重ねて。

 明治35(1902)年創業の松山株式会社は、創業者である松山原造が「単ざん双用犂」の開発に成功して以来、約120年にわたり農業作業機のパイオニアとして挑戦を続けてきました。土を耕し、作物を育て、恵みをいただく。その営みは、弥生時代より何千年と続いてきた人の生命の営みでもあります。私たちは、大地とともに生き、食を育む農業に貢献することで、人の暮らしを支えていきたいと願っています。
 農業は、どんな作物でも収穫するまでに多くの工程が必要です。その工程の一つひとつをいかに効率化し、労力を軽減できるか。農業に携わる人たちの力になれるよう、常に技術を高め、新たな製品を開発し続けています。その技術革新、挑戦こそが、循環型農業の実現、持続可能な社会の実現につながっていくと考えています。
 現在の場所に本社・工場を移転したのは、平成元年のことです。移転の際に、この場所が日本の国蝶であるオオムラサキの生息地域だったことがわかり、私たちが来たことで自然の生態を破壊することがないよう、保全活動にも力を入れ始めました。建物や試験圃場などを合わせた敷地面積が85、873㎡(26、022坪)。その周りを取り囲むように、90、591㎡(27、451坪)の社有林が広がっています。社有林と敷地がほぼ1対1となっている企業は、全国的にみても珍しいのではないでしょうか。

生態系を守り、育むことで
次の世代へ幸せな社会を。

 オオムラサキが生息するためには、エノキやクヌギ、コナラなどの木々が必要です。初めの頃はエノキの苗木を植樹していたのですが、ある時、小さなエノキの若木を見つけて。探してみたら、それが何本もあることがわかったんです。鳥たちが運んできた種が、自ら芽吹いていたんですね。そこからは自然に任せ、芽吹いたものが成長しやすいよう、ちょっとだけお手伝いをしながら、今の里山を守ってきました。あるがままの姿だからこそ、多種多様な木々が茂り、多くの昆虫や鳥たちの生息地域になったのだと思います。蝶好きの社員が観察したところ、約10年の間に80種余りの蝶を確認することができたそうです。当社では、7月にオオムラサキの観察会を開催するなど、多くの方にこの里山を楽しんでいただき、自然に親しみを感じていただけるよう活動を続けています。夏の間、土曜、日曜は守衛に声を掛けていただければ、どなたでも散策していただけますので、ぜひ一度遊びにきてください。
 このほかにも、太陽光発電による自家消費や、新工場建設に際し環境に優しい有機溶剤を含まない塗料を使うなど、地道ではありますが環境に配慮したさまざまな活動を継続的に行っています。また年に一度、社員の子どもたちを1日会社で預かり、職場を回って自分のお父さんやお母さんが働いている姿を見たり、自然観察や工作教室などを行う「ニプロ林間学校」も開催しています。子どもたちは、普段見ることができない親の姿に、目をキラキラさせていますね。誇りを持って働く姿を子どもたちに知ってもらえる良い機会になっていると、社員からも好評です。
 これらの活動が認められ、一昨年には長野県環境保全協会より「信州エコ大賞企業賞」を受賞することができました。これからも一つひとつ丁寧に、持続可能な社会の実現に取り組んでいきたいと思います。

お問い合わせ

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    TEL.0268-42-7500(代) FAX.0268-42-7520(代)

(2024年9月号掲載)