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    みんなで一緒に考えていきたい。

ご縁をいただき
名古屋から信州・中野へ移住。

  名古屋で生まれ育った私が「中野」という地域と出会ったのは、コロナ禍がきっかけでした。それまで音楽業界から海外経験を経て、名古屋でゲストハウスの支配人をやっていたのですが、コロナの影響で宿泊客がまったくいない状況が続いて。一期一会のお客様をお迎えする宿泊の仕事は大好きだったのですが、今後しばらくは厳しいと判断し、転職を考えるようになりました。最初は貿易関係の仕事を中心に探していたのですが、そのうちに、仕事に合わせて住む場所を決めるなら、住みたい場所を選んで仕事を決めるのもいいかもしれないと思うように。そこで移住関係のサイトに登録したところ、ご縁をいただき、中野市さんとつながることができました。
 それまで中野市という地域も、地域おこし協力隊という仕事も全く知らなかったのですが、自分のこれまでの経験を活かして地域に貢献することができればと、思い切って夫婦で移住を決めました。2021年の7月に地域おこし協力隊に着任し、空き家だった建物をお借りして暮らすようになって、まず感じたのは「人があたたかい」ということです。地域コミュニティがしっかりと残っていて、でも壁をつくるのではなく、私たちにも気さくに声を掛けてくれて。同じ地域に暮らす一員として受け入れてもらえたようで本当に嬉しかったですし、中野を元気にするために自分ができることを真剣に考えるようになりました。

NAKANO DROPを拠点に
点から面へ、変化を起こしたい。

 現在、中野市の空き家の数は1、000軒ほどあると言われています。ただ、それが市場に出てこないんですね。先祖が守ってきた家を他の人に貸すことに抵抗があってあきらめていたりと理由はさまざまですが、空き家を利活用するハードルが非常に高くなってしまっているんです。空き家を活用して何かを始めたいと考えている人は多いのですが、需要と供給が合っていないのが現状です。私の役目は、そのハードルを少しでも下げることだと考えていて、そのためにできることを模索、実行してきました。
 そのひとつが、「ゴッタク市」というイベントです。お世話になっている早川建築さんにご協力いただき、2022年の秋に第1回目を開催。翌23年は春と秋の2回行い、今年のゴールデンウィークに第4回となる「ゴッタク市」を開催しました。空き家問題の課題のひとつである残置物を活かす古物販売のほか、スタンプラリーを開催するなど、地域全体を巡る参加型のイベントは回を重ねるごとに盛り上がってきています。メディア等で取り上げていただく中でイベントを知って参加してくださる方も多く、実際に古物を目にする中で「家にもあるかも」と気づくだけで、空き家相談へのハードルが少し下がるのではないかと期待しています。
 また、活動の拠点として昨年の春に「NAKANO DROP」をオープンさせました。ここは、私が地域の方と交流する中でお借りすることができた物件で、もともとは「ヤマダ印刷」という印刷屋さんでした。今後はここを中心にさまざまなイベントを展開し、まちの交流・情報交換の「場」に育てていきたいと考えています。今年の3月で地域おこし協力隊の任期を終えましたが、これからも中野市の空き家問題や地域交流のためにできることを、一つひとつ実践していくつもりです。そしていつか「NAKANO DROP」という小さな点から面へとエリアリノベーションを広げ、それをさらに他の地域にも広げていければ最高ですね。

(2024年7月号掲載)