戸隠の自然に育まれ
いつの間にか、そばの世界へ。
生まれも育ちも戸隠。もともとはお土産屋などを手広くやっていたのですが、父が「そば屋をやる」と、昭和63年3月に「そばの実」をオープン。そんな父の背中を見て育ち、いつの間にかこの道に進んでいました。大阪で修業し、戸隠に戻って以来23年間、戸隠でそばを打ち続けています。
「そばの実」で提供しているそばは、すべて戸隠産です。畑や収穫時期によって違いがあるため、毎朝その日のそばの実をチェックしながら、石臼で自家製粉。細かいものや粗目のものなど、そばを挽き分けてブレンドすることで、常にベストなそば粉に仕上げています。中でも十割そばとそばがきは、昔から戸隠で栽培されてきた在来種のみを使用しています。機会があったら、ぜひ一度味わってみてもらいたいですね。また、水は店の井戸から戸隠の山々の伏流水をくみ上げて使用しています。戸隠特有の盛り方である「ぼっち盛り」は水を切らないので、水は食材の一つとして本当に大切なんです。清らかな水をふんだんに使えることを、ありがたく思っています。
地元の食材を大切にする
その探究心、こだわりに共感。
そばは気温や湿度など、四季折々、その日の状況によって少しずつ変化していきます。「一日として同じそばはない」からこそ、常にそばと会話し、手の感触でそばの声を聞きながら、丁寧にそばを打つことを心掛けています。お客様から、「おそばが好きになった」「こんなに美味しいそばを初めて食べた」などのお声をいただくと、日々の努力が報われたような気がして、また頑張ろうと思えます。お客様に五感で「戸隠」を感じていただけるよう、店内には季節の野花を飾り、器などもできるだけ地元の作家さんの作品を用いています。「そばの実」で過ごすひとときを、楽しんでいただければ嬉しいですね。
「蕎麦朧」を初めて食べた時の、あのほろほろと口の中でほどけていく食感は衝撃的でした。そばの風味がありながら嫌な粘りがなく、和三盆の後味の良さも抜群です。休日にコーヒーとともにいただくと、ほっとくつろげるひとときを過ごせます。ただ、うちの子どもも大好きなので、よく取られてしまうんですけどね。
「旬彩菓たむら」さんのお菓子には、地のもの、旬のものに対するこだわりが強く感じられ、「蕎麦朧」一つとっても探究心があるなと感心します。「私たち職人が地元の食材の良さをお客様に伝える役目を担っているんだ」という自負も感じられ、学ぶことも多いですね。私も戸隠の地で、これからも地のものを活かして美味しいものを提供する、その「こだわり」を忘れずにいたいと思います。