そばの里、信州戸隠で
製粉業を営んで。
戸隠村で食料品や雑貨の販売を営んでいた我が家が、製粉業を生業にしたのは、私の父の代からです。昭和27(1952)年、柳原式製粉機を購入し、農家さんからそばを仕入れて製粉業を始めました。それまでは何軒かの農家さんが共同で水車小屋を建てて製粉していましたから、いつでも製粉できるというのは強みだったと思います。
当時は宿坊などに納品することが多かったようですが、それでも余ってしまう余剰のそば粉をなんとか活用しようと、翌昭和28(1953)年には乾麺づくりもスタートさせました。もちろん手作りで、試行錯誤の連続だったようです。事業が成長していく中で、既に東京で就職していた私や、現在、代表取締役専務である弟は、父から家業を応援してほしいと相談を受け、戸隠に戻りました。午前中は製造を、午後は新規営業に取り組み、父とともに当時の社員たちと協力し、現在のおびなたの基盤をつくりました。
戸隠産のそば粉だから
出せる味わいがある。
戸隠のそばの歴史は古く、冷涼な気候を活かしてそばを栽培し続けてきました。美味しいそばを育てるために必要な条件として、「清らかな水と澄んだ空気」「朝霧が発生しやすい地形」「水はけの良い土壌」「昼夜の温度差が大きい気候」などが挙げられますが、戸隠はそれらをすべてクリアし、夏と秋の2回、そばを収穫することができます。
そんなそばの里、戸隠にこだわり、この地とともに成長してきたおびなたは、そば専業の製粉メーカーとして、さまざまなニーズに対応してきました。小型石臼製粉や大型石臼製粉、大量生産できるロール製粉、バケット製粉など、お客様のご要望に合わせて製粉方法も変えています。中でもバケット製粉は特徴的で、そばの実を丸ごと挽きぐるみ製粉し、空気圧送ではなくバケット昇降機でそば粉を搬送するため、そば粉が空気に触れにくく、そばの風味を損なうことがありません。たむらさんの「蕎麦朧」に使用しているそば粉は、このバケット製粉で挽いたそば粉をご納品させていただいています。もちろん、戸隠産100%。基本的にご注文をいただいてから製粉し、できるだけ早くお届けするようにしていますので、戸隠産のそば本来の甘みと香りを感じていただけると思います。
平成26(2014)年9月、たむらさんとご縁をいただき、おびなたのそば粉を使って「蕎麦朧」を作っていただくことになった時は嬉しかったですね。ふわりと香るそばの香りと、ホロホロと口の中でほどけるような食感が美味しく、そば処信州を代表する銘菓であると思います。
おびなたも、たむらさんと同じく長野に拠点を置く企業として、これからも戸隠のそば粉や美味しいそばを、多くの人に味わっていただけるよう、努めてまいります。