そんな日々の中、ある時友人に誘われてアラスカに行ったんです。とんでもない斜度、しかも新雪ではなく、コンディションは雪崩の後の荒れた斜面でした。これまで競技者として何本ものスキーで滑ってきた経験から、その時履いていたバックカントリー用のスキーの性能に物足りなさを感じて、もっと性能の良いスキーが欲しいという思いが生まれました。
そこで全国のスキーショップにリサーチし、バックカントリースキーのニーズを調査。潜在的なマーケットがあることがわかりました。自分が納得できるものを作りたかったので生産は国内と決め、バックカントリーを中心としたブランドの立ち上げを国産製造メーカーにプレゼンしました。そこから理想とするスキーの開発に着手。試行錯誤の上、2003年の秋に、Vector glideとして初めての、「CORDOVA」をリリースすることができました。
私たちは、スキーをひとつの作品として捉え、乗り味をはじめとする滑走性能はもちろん、デザイン性も含め、愛着を持って長く愛用してもらえるプロダクトとしての耐久性を大切にしています。滑り手が作るものづくりでしか成し得ない特別なスキーを、これからも思いを込めて作り続けていきたいと思います。
昨年、長野市に本社を移転。長野で出会った友人から紹介され、R-DEPOTへの入居を決めました。工場との打ち合わせや確認もスムーズですし、白馬や野沢温泉など、スキー場にも近い。さらに新幹線で東京まで簡単に出られるため、長野市は地の利のよいところだと感じています。R-DEPOTも、何か新しいこと、面白いことにチャレンジしようとする企業が多く、刺激を受けますね。
今後はここを拠点に、行政や大学などとも連携しながら、自然環境に配慮したものづくりや、スキー場の今後の在り方等について、共同プロジェクトを展開していければと考えています。