• 人と地域に優しい穀物
    ソルガムを通して
    長野から世界へ
    新しい美味しさを提案。

      • AKEBONO株式会社

        代表取締役 井上 格

        Itaru Inoue

      • AKEBONO株式会社
      • 住所/長野市若里4-17-1 UFO Nagano 406号
      • http://akebono-nagano-japan.com/

起業への思いと
子どもの未来が合致した瞬間。

 栃木県で生まれ育った私が長野と関わるようになったのは、大学時代に知り合った妻がきっかけです。妻の実家が長野市で「あけぼの印刷」という印刷会社を営んでおり、大学時代からいつかは起業したいと思っていた自分にとって、義父は良き相談相手でもありました。東京の商社に就職してからも、折々に長野を訪れ、自然豊かなこの地でなにか事業を起こせないだろうかと考え続けていました。
 そんな時に、長野市と信州大学が、耕作放棄地を活用して「ソルガム」という穀物の栽培を進めていることを知ったんです。というのも、うちの子どもが小麦アレルギーで、その代替の食材としてグルテンフリーの「ソルガム」にたどり着いたのですが、買えるのは海外産のものばかりで。安全な国内産がないかと探したところ、長野市で栽培しているじゃないですか。これはもう運命だと勝手に縁を感じ、すぐに長野市に相談に行きました。その頃はまだ、ソルガムの栽培方法や品種の選定などの試験・研究の側面が強いプロジェクトだったので、まずは地域おこし協力隊として参画させていただき、2019年8月に起業。信州産ソルガムを、加工、販売するルートを確立し、AKEBONO株式会社として第一歩を踏み出しました。

人と地域に優しい穀物
信州産ソルガムを世界へ。

 ソルガムは、世界五大穀物のひとつとされ、日本では「タカキビ」とも呼ばれています。グルテンフリーのアレルギー対応食材であり、GABAやポリフェノール、食物繊維なども豊富に含まれているため、健康や美容に配慮されている方にもおすすめです。栽培方法も米や野菜ほど手がかからず、山間地域でも栽培することができます。現在は、50団体以上の生産者さんの協力を得て、年間10~15tの信州産ソルガムが栽培されています。農薬を使用せずに栽培される、安心・安全な「信州産ソルガム」を提供できることを、会社として、またアレルギーを持つ子どもの親として、嬉しく思っています。
 またソルガムは、地域の課題となっている耕作放棄地の解決につながるだけでなく、茎や葉を建材やキノコの培地として活用したり、使用後の培地をエネルギーに転換したりと、資源を余すことなく利用することができます。「信州産ソルガム」を通して、持続可能な社会に貢献することも、当社の重要な役割だと考えています。
 そんな「信州産ソルガム」の素晴らしさ、美味しさを、もっと多くの人に知ってもらいたいと、この春、ソルガムを使ったパンとお菓子のお店をオープンすることにしました。店の名は、「縁─enishi─」。これまでご協力をいただいた多くの方との縁に感謝し、人と人とのご縁やつながりを大切にする店にしたいと思っています。「信州産ソルガム」はもちろん、使用する素材もできるだけ地産地消を心掛け、人にも地域にも優しいお店を目指します。現在、オープンに向けてクラウドファンディングを行っています。2月末まで募集していますので、応援よろしくお願いします。またオープンの際には、ぜひ一度、「信州産ソルガム」の美味しさを試していただけたらと思います。
 会社設立から、あっという間の約3年半。義父の会社の名前を受け継ぎ「AKEBONO」と名付けた当社は、まだ夜が明けはじめた曙の状況です。ソルガムの生産、加工、流通の体制をしっかりと整え、安心・安全な「信州産ソルガム」の認知度を高めるために手を尽くしていきます。そしていずれは長野から世界へと、「信州産ソルガム」の美味しさを発信していきたいと思います。

(2023年3月号掲載)