「どら・セッション」第4弾は、長野県立大学の学生さんとのセッションから始まりました。大学生らしく、フードロスなどの社会課題やSDGsの視点から、さまざまな質問やアイデアが次々と出され、とても刺激的な時間を過ごすことができました。また、これからの時代に対応するためには、そういった視点を経営にも菓子作りにも取り入れていく必要があることを改めて感じ、今までたむらが目指してきた方向性は間違っていなかったなと、確信を持つ貴重な機会となりました。
とはいえ、彼らの求める「どらやき」のハードルは非常に高く、若い世代や子どもに再認知してもらえる「どらやき」とは何ぞやと、頭が痛くなりました。手に持って気軽に食べられる「どらやき」の良さを活かしつつ、ぱっと目を引くものにしなければならない。もちろん美味しさは大前提です。「見た目が地味」「中身がわからない」と言われたマイナスポイントをクリアするためにはどうしたらいいのか。セッションが終わった時点で、頭は真っ白。なんのアイデアも浮かばないまま、店へと戻ることになりました。
浮かんできたのは
「愛を込めて花束を」。
どうしようかと考えながら帰る道すがら、なぜか頭の中に流れてきたのは、Superflyの「愛を込めて花束を」。歌詞を口ずさみながら、花束のような「どらやき」ってどうかなあと思い浮かべてみたら、なんだかとてもしっくりきたんです。花束って、もらったら嬉しいですし、そこには必ず笑顔があります。新しい「どらやき」が、みんなを笑顔にしてくれたらいいなと思ったら、どんどんイメージが膨らんでいって。そこで、「花束」をキーワードに試作をはじめることにしました。
まず考えたのは、もっとも重要な皮。通常のどらやきの皮だと、折り曲げようとすると割れてしまいます。そこで今回は、皮に国産のもち米を配合しました。普通のどらやきの皮と比べて膨らみにくく、焼きの時間もかかりますが、だからこそ柔らかく仕上がります。1枚1枚、丁寧に手焼きすることで、もちもちとした独特の食感を生み出しました。
中に包む餡は、丹波の大納言を用いた、たむら特製のどらやきの餡を、あえて少し固めに調整しました。皮が柔らかい分、餡で形が崩れないよう配慮しています。そこに、エアレーションした軽い口当たりのカルピスバターを美しく絞り、金箔を足すことで、花束の華やかさを表現。そして最後に、自分でも初挑戦なのですが、食べられる花「エディブルフラワー」を飾りました。やっぱり本物の花の力は偉大で、全体がぱっと明るくなりましたね。皮と餡、カルピスバターの調和に爽やかな酸味がプラスされて、とても美味しいと思います。
花束をどらやきにしたんだから、「どら in フラワー」と命名。ドライフラワーのもじりだとスタッフには笑われましたが、なかなか良いネーミングだと思っています。今回は、自分の中にこんな発想があったんだと、自分でも知らなかった引き出しを見いだすことができ、非常に貴重な経験をさせてもらいました。固定観念にとらわれず、常に新しいことに挑戦するエネルギーを、学生の皆さんからもらったように思います。