• 長野市街地の
    空き家が生まれ変わることで
    人と町がもっと優しく
    つながり合う輪を生み出したい。




まちづくりに興味を持ったのは
高校時代の学びがきっかけ。

 長野市内で生まれ育った私が自分の暮らすまちについて考えるようになったのは、高校時代の学びがきっかけでした。入学した高校が文部科学省の事業であるSGH(スーパーグローバルハイスクール)に指定されていて、そのカリキュラムの一環として、長野市内や近隣エリアのまちの状況や課題について調べたんです。その学びの中で「空き家」が問題になっているということを知り、今まで見えていなかった自分のまちの課題を認識するようになりました。
 同じ頃、権堂のアーケードに接する一角に、「GOFUKU」というおしゃれなスペースができたことを知って。それが空き家だった老舗の呉服問屋をリノベーションした建物だったんです。それまで負のイメージしかなかった「空き家」が、壊さなくてもこんなにハッピーで人が集まる場所に生まれ変わるんだということを目の当たりして、本当に驚きましたね。まちの課題を解決する「正解」のひとつを見せられたようで、そこからさらに古い建物やまちづくりに興味を持つようになりました。

自分がやりたいと思うことに
まずは一歩を踏み出したい。

 まちづくりをもっと学びたいと、進学先も建築や環境を学べる大学を志望。福井と東京の大学で、貪欲に学びを深めました。そして集大成となる卒論を、自分の原点である長野市にしたいと、伝手をたどって行き着いたのが倉石さんとR︲DEPOTだったんです。
 昨年の8月頃からアルバイトインターンとして倉石さんの仕事や空き家見学会に同行させてもらい、どのように「空き家」を見つけて大家さんと交渉し、借りたい人とつなげていくのかを実地で学ばせてもらいました。そこで見えてきたのは、大家さんたちの倉石さんへの信頼の深さです。皆、空き家の仲介を依頼するというよりも、倉石さんを信頼して託しているんです。大家さんの中には「事情があって空き家になってしまったけれど、先祖の土地や家を自分の代で壊すのは申し訳ない」と思っている人も多くいます。そんな「思い」も含めて受け取って、「ここをこう直したら使える」とか「こんな人に貸したら面白いんじゃないか」など、いろいろな角度から大家さんとの会話を重ねていく。その共感性の高さが「任せたい」と思わせるのだと思います。
 また、空き家見学会に参加する人たちには、案内する空き家の条件よりも先に、そのまちの背景や歴史をたっぷりと語っています。まちの空気感を知ってもらうことでミスマッチを防ぐのはもちろん、単に空き家を貸すということだけではなく、まち全体で空き家をどう活かしていくか、という広い視点が必要なのだと感じています。
 実は倉石さんのもとで学びながら同時進行で就活も進めていたのですが、どこも自分のやりたいことにピタッとハマらなくて「倉石さんのところで働きたいです」と直談判したんです。そうしたら「はい、いいですよ」と言われて、4月からR︲DEPOTの社員になりました。まだまだわからないことばかりですが、自分なりに自分がやりたいと思ったことに、一歩踏み出せたように思います。担当するストックプロジェクトは、「あるく・であう・はなす・つたえる」がキーワード。どんなことが起きるか、実はワクワクしています。

(2022年8月号掲載)