• 受け継いだ技術を
    大切に継承していくことで
    美味しい牛乳を
    届け続けていきたい。

      • オブセ牛乳

        西岡 幸宏

        Yukihiro Nishioka


      • オブセ牛乳
      • 上高井郡小布施町大字中松532-2
      • 026-247-2243
      • http://obuse-milk.com/

未知の世界へ
思い切って飛び込んで。

 終戦後の昭和25年に、先々代が故郷であった小布施町で始めた小さな牛乳屋が「オブセ牛乳」です。それから約70年、変わらぬ製法、変わらぬ味で丁寧に牛乳を作り続けることで、小布施町に生まれ育った人ならば誰もが知っている「オブセ牛乳」へと成長を遂げました。
 そんな「オブセ牛乳」の経営に携わるようになって、早4年が経ちました。それまで私は岐阜県庁の職員として、妻は教師として、全く牛乳とは関わりのない世界で暮らしていたんです。そこに持ち上がったのが、妻の実家である「オブセ牛乳」の後継問題でした。牛乳を作ったこともなければ、会社経営の経験もない中、今の暮らしを捨てて新しい世界へ飛び込むのは、本当に悩んだし迷いましたね。それでも勇気を出して「オブセ牛乳」を継いだのは、なによりオブセ牛乳が美味しかったから。「こんなに美味しい牛乳を、ここで途絶えさせてはいけない」という強い思いが、私たち夫婦を三代目継承へと導いてくれました。
 覚悟を決めて小布施町に来て改めて感じたのは、オブセ牛乳が町の皆さんから本当に愛されているということ。子供の頃に学校給食でオブセ牛乳を飲んで育った人たちが、自分たちの町の牛乳として、オブセ牛乳を大切に思ってくださっています。「オブセ牛乳の味が自分の定番だから」と言ってくださる方も多くて、本当にありがたいと思います。

80℃15分殺菌で
変わらぬ美味しさを届け続ける。

 右も左もわからないまま飛び込んだ私たちですが、「オブセ牛乳」として絶対に守り続けていこうと決めているのが、牛乳の製法です。
 現在、市販の牛乳でもっとも多いのが120℃~150℃で2~3秒間殺菌する「超高温殺菌」。非常に高い温度で瞬間的に殺菌できることから、大量生産が可能になります。今、スーパー等で低価格で販売されている牛乳は、ほとんどが「超高温殺菌」で作られた牛乳です。
 そんな中、オブセ牛乳は先々代が「この殺菌方法が一番美味しい牛乳になる」と確信した「80℃15分殺菌」製法を今も守り続けています。手間と時間をほどよくかけて丁寧に生乳を殺菌することで、オブセ牛乳の目指す「甘味とコクがある」美味しい牛乳がうまれるんです。自分たちが美味しいと信じた味、小布施の人たちに愛される味を変えることなく、これからも真摯に美味しい牛乳を作り続けていきたいと思います。
 オブセ牛乳は、小布施町内はもちろん、長野市をはじめとする近郊エリアでも販売されています。近頃では珍しい瓶の牛乳は、小布施のハイウェイオアシス等で購入できます。天使のロゴマークやレトロな風合いの瓶がかわいいと、わざわざ本社まで買いに来てくださる方もいらっしゃるんですよ。
 最近では、お菓子屋さんやカフェ等でもオブセ牛乳を使ってくださるお店が増えてきて、ありがたいことだと感謝しています。これからも地域の皆さんのお力をお借りしながら、牛乳+αの挑戦をどんどん進めていきたいと考えています。カフェの店長さんからは、「オブセ牛乳で作ったカフェオレは、牛乳本来の甘味とコクでとても美味しくなる」と言っていただいたので、ぜひご家庭でも一度試してみてほしいですね。
 人口の減少や嗜好の多様化、酪農家の減少など、牛乳業界にもさまざまな課題があります。それでも、オブセ牛乳を愛してくださるお客様がいる限り、明日もまた、美味しい牛乳を作り続けていきたいと思います。

(2020年3月号掲載)