• 鬼無里のために
    自分たちに何ができるかを
    考えることで
    仲間が増えていきました。

      • 鬼無里プライドプロジェクト

        樋口 綾

        Aya Higuchi


      • 鬼無里地区住民自治協議会
      • 長野市鬼無里日影2750-1
      • 026-256-2213
      • http://kinasa.jp/resident/

嫁いできたからこそ
鬼無里のために何かしたい。

 2005年に長野市と合併した旧鬼無里村は、現在人口が約1、300人。高齢化が進み、60%以上が60歳を超える山あいの小さな地域です。それでもみんなで力を合わせて、「鬼無里に住んで良かった、鬼無里で育って良かった」と思える場所にしようと、さまざまな取り組みを行っています。
 そんな鬼無里に嫁いできたのは今から十数年前。初めて鬼無里を訪れた時は「ずいぶん山の奥まで来たな」と正直驚きましたが、豊かな自然が残る鬼無里は流れている時間も穏やかで、ここなら子育てもゆったりできるかな、と思ったことを覚えています。思った通り、子どもたちは地域全体で見守り、みんなで育てているような安心感がありますね。小中学校でも、人数が少ないからこそ一人ひとりがお互いに協力しながら主体性をもって動き、のびのびと成長しているように思います。
 子育てもひと段落したところで、鬼無里の住民自治協議会で働き始めました。現在、住民自治協議会で働いているのは、みんな外から嫁いできた奥さんなんです。鬼無里に対する視点がここで生まれ育った人と違うからこそ、鬼無里の良いところが見えるのではないかと思います。
 雪に対する考え方もそのひとつ。鬼無里にはスキー場などの冬の観光資源がないため、雪というと「雪下ろしが辛い」「大変」といったものばかりで、「何かをやろう」という雰囲気はありませんでした。まずはその視点を変えたいと思ったんです。

鬼無里プライドプロジェクト
を結成して。

 まず、鬼無里にとって地域の課題でもある「雪下ろし」問題に取り組みつつ、「雪下ろし」を逆手にとって、冬でも鬼無里に人が来てくれるような活動にできないかと考えました。そんな時に「越後雪かき道場」の存在を知り、これならマイナスのイメージだった雪をプラスに変えて、地域内はもちろん、さまざまな人と交流する「場」を設けることができるのではないかと思ったんです。そこで地域の30代、40代を中心に声をかけ、みんなで「越後雪かき道場」に弟子入りすることにしました。
 「越後雪かき道場」は、雪下ろしの知識やノウハウを広く伝えることで地域の安全な除雪をバックアップし、雪下ろしボランティアの育成に力を注ぐ団体です。開催される講習会に参加することで経験を積み、鬼無里に戻って安全な雪下ろしを啓蒙するなど活動を重ねることで、2019年2月9日、正式に「のれん分け」をしていただくことができました。これからは「鬼無里雪かき道場」として、鬼無里が中心となって雪下ろしの講習会やイベントを開催することができます。住んでいる人はもちろん、地域外の人にもどんどん参加してもらって、雪を通した交流を盛んにしていきたいなと思っています。
 現在、これらの活動を中心に行っているのが「鬼無里プライドプロジェクト」のメンバー。あくまでもボランティアなので、鬼無里のために何かやろうと思った人たちが集まって、気負うことなく楽しく活動しています。鬼無里独自の活動として、雪のない季節に高齢者宅の屋根の形状や雪止めの位置などを調査し、冬に安全に雪下ろしができるようにするための「雪下ろし住宅カルテ」の作成にも取り組み始めました。
 私たちが楽しみながら、鬼無里のためにできることをやっていくことで、鬼無里で育つ子どもたちが自分たちの故郷にプライドを持てるような、そんな鬼無里になっていってほしいと願っています。

(2020年2月号掲載)