A. ご質問の「みなし残業」は、あらかじめ一定時間分の残業代を定額で払う定額残業制や固定残業制といわれている制度と思われます。
割増賃金を基本給や諸手当にあらかじめ含める方法で支払うこと自体は禁止されていませんが、割増賃金に当たる部分の金額が労働基準法第37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは、その差額を支払う必要があります。みなし残業として決めた45時間以上の労働があった場合には、その分の残業代を会社は支払わなければなりません。残業代が支払われなかった場合は「賃金不払残業」となり違法です。
働き方改革により、昨年の4月から大企業に課せられていた時間外労働の上限規制が、今年(2020年)の4月から中小企業にも適用されることが決まっていますので、今回の法改正では時間外労働の上限が罰則付きで規制され、臨時的な特別の事情があって労使で合意する場合(特別条項)があっても、下図のとおり上限が規制されます。そのため、割増賃金を適正に支払うため管理監督者や裁量労働制が適用される者も含め、原則すべての労働者について労働時間の状況を把握することが義務付けられました。
その把握方法は、原則的にタイムカードの記録やパソコンの使用時間の記録等の客観的な方法によるべきものとされており、自己申告制はやむを得ずこうした客観的な方法により把握しがたい場合(たとえば、事業場外で行う業務のために直行・直帰する場合など)に限られます。
質問者様の場合、「みなし残業」をやめて、自己申告された時間で残業代を支払うとのことですが、タイムカード等の客観的な方法で労働時間の状況の把握が困難な事情がないのであれば、自己申告制によることは適切ではありません。
もし、自己申告制によらなければならない事情があるのであれば、実際の労働事案を正しく申告できるようにするための措置が講じられていないようですので、この点の改善が必要になると考えられます。
労働時間の把握と残業時間の制限は、社員の健康とより良い職場環境を実現するために取り組むものです。現状を改善していくためにも、まずは社員一人ひとりの労働時間が正しく把握できる制度等を作っていくことが求められています。
社内的に提案等をしても改善が見込めないような場合は労働局または最寄りの労働基準監督署にご相談ください。