自然と共生し
活用しながら守っていく。
地域とともに歩む
私たちが目指すべき姿です。
2015年の国連サミットで「SDGs」が採択され、2030年までに達成すべき世界共通の目標が示されてから、今年で10年。私たちは、持続可能な社会へと舵を切れているのでしょうか。
このシリーズでは、さまざまな課題解決のために、長野の企業や団体がどんな取り組みを始めているのかをご紹介します。今回は、株式会社サンクゼールの取締役であり農学博士でもある河原誠一さんと、経営企画室の池田志保さんにお話を伺いました。
地域とともに
自分たちができることを。
創業者である現会長、久世良三が、夫婦で旅した南フランスの美しい田園風景と、そこに暮らす豊かな人々の姿に感銘を受け、縁あって巡り合った飯綱の地で新たなスタートを切ったのがサンクゼールの始まりです。創業から約50年。「サンクゼールの丘」と名付けられた飯綱の地には、ワインぶどうの畑が広がり、四季折々に表情を変える美しい風景は、訪れる方々に贅沢な時間をお届けしています。
地元の方との関係も深く、りんごの産地である飯綱町の美味しいりんごを使ったシードルや、アップルブランデーの醸造にも力を注いでいます。特に英国りんごの「ブラムリー」は、飯綱町の多品種栽培の代表格として生産量を伸ばしており、サンクゼールのシードルの中でも特に人気となっています。これからも地産地消の商品を作り続けることで地域の農家さんを支援し、サンクゼール始まりの地である飯綱町を、ともに盛り上げていきたいと考えています。
信濃町の社屋は2014年から稼働を開始しました。当時は久世福商店の起ち上げ等で飯綱の社屋が手狭になってきており、どこかに良い場所はないかと探していたところでした。工場として使われていた建物のまわりには手付かずの森が広がり鬱蒼とした雰囲気でしたが、だからこそ可能性を感じて。会社には久世会長が思い描いた夢のプランがあり、私たちの「思い」もそこにプラスして、新しいプロジェクトが動き出しています。
自然と共に生きる
その豊かを感じながら。
11 haある敷地面積のほとんどが森という状況の中、まず始めたのが森林の調査です。信州大学の井田秀行先生にお願いして一緒に観察を行う中で、この森が非常に多様性に富んだ豊かな森であることが分かり、社員有志による保全が進んでいきました。「サンクゼールの森」と名付けられた森では、毎年「サンクゼールの森ネイチャーウォッチング」を開催。大学の学生さんや社員とその家族が自然を楽しみながら、自然を守る活動を展開しています。試行錯誤の連続ですが、「活かして守る」森づくりを目指していきたいと思っています。
また、「サンクゼールの森」は、2024年3月に環境省が推進する「30by30」の自然共生サイトに正式認定されました。「30by30」とは、2030年までに国土の30%以上を自然環境エリアとして保全するという目標で、2022年12月に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された新たな枠組みの中から生まれた考えです。日本では目標を達成するために、国立公園などの保全地域だけでなく、民間が取り組む「生物多様性の保全が図られているエリア」を「自然共生サイト」に認定することで、30%到達を目指しています。現在、日本で認定されているサイトは253か所となっており、全国各地でさまざまな取り組みが始まっています。信濃町ではサンクゼールの他に、一般財団法人C・W・ニコル・アファンの森財団の「アファンの森 北エリア」も認定されました。サンクゼールは2019年にアファンの森財団とオフィシャルスポンサー契約を結び、互いに連携しながらさまざまな保全活動に取り組んでいます。これからも、信濃町という地域から美しい森を蘇らせ、自然と共に生きる素晴らしさを発信していきたいと思っています。
(2025年2月号掲載)