長野市伊勢宮に本店を構える「旬彩菓たむら」は、季節の旬、そして人生の折々に訪れる旬を彩るお菓子を作り続けています。大切にしているのは、ともに歩む地元の恵みを活かすこと。長野は美味しい果実や蜂蜜、卵や牛乳、小麦粉やそば粉など、素晴らしい食材の宝庫です。そんな恵みをお菓子に込めて、お客様に笑顔をお届けすることが、旬彩菓たむらの願いです。
今回は、菓子づくりに必須の牛乳にスポットを当て、高山村の広大な敷地で乳牛を育てる宮川鉄也さんにお話を伺いました。
高山村の自然の中で
牛たちとともに生きる。
高山村で生まれ、乳牛を育てる父の背中を見て育ちました。小さい頃から牛の世話を手伝ってきましたし、牛たちが身近にいることが当たり前の暮らしだったんです。自分にとって酪農家になることは、自然の流れでした。
令和元(2019)年に、この場所に牛舎を建て、現在は24頭の乳牛を飼育しています。ほとんどがホルスタイン種で、ブラウンスイス種が4頭います。ホルスタイン種は世界中でもっとも多く飼育されている乳牛なので、ご存知の方も多いと思います。白と黒の模様がある大きな牛で、乳量も他の牛と比べると多いですね。ブラウンスイス種はスイス原産の牛で、その名の通り茶色い牛です。ホルスタイン種よりも乳量は少ないのですが、乳脂肪分が若干多いといわれています。お乳が出る期間の牛は基本的に牛舎にいますが、若い牛やお腹に赤ちゃんのいる牛たちは、広い牧場で新鮮な草を食べながら過ごしています。私はヤギも飼っているので、昼間は牛とヤギが牧場をのんびり歩いたり遊んだりする姿を見ることができますよ。番犬のベルや、鳥追い隊の猫3匹も立派な仲間です。酪農にはどうしても匂いの問題があるのですが、この場所は民家が近くにないので、私も牛たちも豊かな自然の中でゆったりと過ごせています。
地産地消の牛乳で
地域の未来を支えたい。
私の1日は、朝4時半のエサやりから始まります。その後は5時から搾乳を行い、夕方も同じく4時半頃からエサやり、5時から搾乳と、約12時間のサイクルで毎日動いています。命あるものを飼育する責任として、1日も休むことはできません。よく「大変ですね」といわれますが、自分にとっては日常でもあり、牛たちが元気にたくさんのお乳を出してくれることが喜びでもあります。
現在は、1日に約800ℓほどの生乳を搾り、そのほとんどが小布施町にあるオブセ牛乳さんに運ばれて、皆さんの手元に届く牛乳になっています。昭和25(1950)年に創業されたオブセ牛乳さんは、先々代から続く「80℃15分殺菌」を守り続け、甘味とコクのある牛乳を作り続けていらっしゃいます。小布施町の小中学校の給食はもちろん、高山村の小中学校の給食にもオブセ牛乳が届けられているそうです。地元の子どもたちの健康を守る給食に、自分の牛のお乳が役立っていると思うと本当に嬉しいですね。地産地消の牛乳の美味しさを、もっともっと多くの方に味わっていただけたらと思います。また、牧場ではポニーも2頭飼育していて、毎年、高山小学校の子どもたちが乗馬体験に訪れています。今は大きな生き物とふれあう機会も少なくなってきているので、牧場だからこそ貢献できることがあれば、今後も積極的に取り組んでいきたいと思います。
旬彩菓たむらさんとは、オブセ牛乳の西岡社長を通じてご縁をいただきました。地域の素材を活かし、地産地消のお菓子作りを目指しているたむらさんが、牧場まで訪ねてきたときはびっくりしましたね。本気で地元の酪農家や農家さんを応援してくれているんだと、心強く思いました。その熱い「思い」に応えられるよう、私もさらに頑張りたいと思います。