コロナ禍の中で過ぎたこの3年間、自分は編集者として、さまざまな街の人の苦しみや変わり様を見てきました。荒れた目をしている人も多かったですが、そんな中でも踏ん張っている人というのは確実にいて。札幌に「UNTAPPED HOSTEL」というホテルを営んでいる神輝也さんという人がいるんですが、彼は、コロナ禍で困窮した人たちのための避難施設・シェルターを開設し、さらに2021年の10月には、社会と福祉の接点となる新たな場所として「Seesaw Books」という書店をオープンしました。そんな彼の、「社会の底が抜けていることを見せないように、俺たちが振舞わなくちゃいけない。穴があいていることに無関心で放っておくのではなく、どんな方法でもいいから、その穴を俺たちが埋めないといけない」という言葉は、胸に強く刺さりましたね。彼の生きざまや想い、行動力に共感し、40代を迎えた今、これからは大人として踏ん張って、次の時代を作る礎になりたいという思いが強くなりました。自分も自分のできる方法で、穴を埋めていきたいと思っています。
以前から、「場」の重要性というのは感じていて、善光寺の近くに「シンカイ」という店を構えていたのですが、さらに昨年の春、R︲DEPOT内に、代表を務める編集者集団「Huuuu」のオフィス兼コミュニティシェアスペース「窓/MADO」を、そして昨年の秋には、権堂にスナック「夜風」をオープンさせました。最近はいろいろな手段で連絡や相談を受けることも多くなってきたので、「夜風」が、悩んでいる人や一歩を踏み出せずにいる人の、思いを吐き出せる場になればと思います。
若い人たちには、「やりたいことがあるなら、まずはそれに名前をつけて旗を振れ」と言っています。そうすれば、誰かが気づいてくれる。旗を振らなければ気づいてもらえないし、やりたいことも伝わらない。自分一人だけで突き進まなきゃいけないと思って一歩が出ないなら、まずは旗をふってみようよと。実際100人に同じ話をして、行動に移す人は1人ぐらいですが、それでも言い続けて、反応してくれた人の気持ちに応えていきたいですね。