ちょうどその頃、門前では新しい風が吹き始めていました。西之門町の通りは南北の1本だけで123mしかないんですが、移住してきた人が面白い活動を始めていて。自分も何かしたいと、町の仲間とともに西之門町青年部を起ち上げて動き出しました。中でも月1回、第4日曜日に開催していた「西の門市」は好評で、継続することで町に人が集まる「場」を作ることができるんだという喜びと手ごたえを感じることができました。その様子を善光寺の御住職が見ておられて、声をかけていただいたのが「善光寺びんずる市」の始まりです。
「おびんずるさん」といえば長野では知らない人はいないでしょう。撫仏として親しまれ、治したい部位を撫でられ続けて、お顔も足もつるつるになっています。そんな「おびんずるさん」が2013年に300歳になられるということで、それを機に善光寺という「場」を活かして、人が行き交い、賑わいと笑顔があふれる「善光寺びんずる市」が始まりました。コンセプトは「手しごと」。アマからプロまで、クラフト作家さんや地域の農家さん、力を試したいパン屋さんやパティシエさんなど、自分の手しごとを紹介・販売する場として出展してくださっています。遠くは九州や東北からも出展。口コミで評判が広がり、今では毎月多くの店が立ち並ぶようになりました。またびんずる市に出展、関わった人たちが門前の空き家をリノベーションしてお店を開くなど、びんずる市を通して地域の活性化にもつながっています。この循環こそが目指すべきことであり、「人」と「町」がびんずる市を通して繋がり、門前の未来が再興されていくことを願っています。
この2年はコロナ禍もあり厳しい状況が続きましたが、権堂に出張するなど工夫することで、「びんずる市」を途絶えさせることなく続けてきました。その取り組みが評価され、昨年は「グッドデザイン賞」を受賞。10周年を迎えた今年は御開帳の年ということもあり、大いに盛り上がっています。次回の開催は6月25日(土)。城山公園周辺で10時から開催されます。7月からは善光寺境内で毎月第2土曜日の10時から16時まで開催。ぜひ多くの皆さまにご来場いただき、ものづくりを通じた出会いを楽しんでいただきたいと思います。