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さまざまな手続きを経て始まった白金家の工事ですが、これがとにかく大変でした。保存地区の建物を復元するということは、釘ひとつ打つにしても長野市を通して文化庁にお伺いをたてないといけないんです。結局、復元工事に2年の月日を費やすことになりましたが、隠れていた栗やケヤキの柱や梁が現れるたびに、曾祖父がどんな思いでこの建物を建てたのか、その心に触れているようで嬉しかったですね。愛着がどんどん湧いてきて、この宿を私の代で途切れさせてはいけないという思いが、自分の中で育っていくのを感じました。そうして復元が終わった白金家を見上げたとき、「この歴史ある建物を多くの人に見ていただきたい、曾祖父の思いを受け継ぎたい」と素直に思えたことが最後の決め手となり、4代目女将として宿屋を始めることにしました。
多くの方にお力添えをいただいて、平成30年の年末に再出発した白金家。曾祖父の時代の屋号は「白金屋」だったのですが、家に帰ってきたときのような、温かくやすらぎのある宿にしたいという私なりの思いもそこに足して、「白金家」という名で開業させてもらいました。
「白金家」は復元ではありますが、断熱、遮音、耐震を備えた宿屋に生まれ変わっています。お部屋は全部で3室。総宿泊人数8名の小さな宿ですので、ご両親やお子様と一緒に3世代でご宿泊されたいといった際には、ご家族での全館貸し切りにも対応しています。お料理も戸隠の地のものを中心に手作りの品をご用意。リピーターの方には同じ料理を出さないよう心掛けています。今後はさらに安全・安心な宿として、さまざまなプランを企画し、ご要望にお応えしていきたいと考えています。
この春、戸隠では4月25日から5月25日までの1カ月間、戸隠神社式年大祭が開催されます。式年大祭は、古来より丑年と未年に行われてきた伝統ある祭事。長野県指定無形民俗文化財である太々神楽は連日献奏されますので、ぜひ長野を中心とした北信地域の皆さまにも、パワースポット戸隠を満喫していただきたいですね。