現在、志賀高原では地域合意のもと、環境省の補助金を活用した廃屋の撤去、多言語看板の整備等が進められています。また、環境省では蓮池地区をビューポイントと位置づけ、地域の合意・協力のもと廃ホテル跡地の園地整備を行い、小さなイベント等が開ける芝生の広場や、池を周回できる歩道を整備しました。山の駅と一体となった利用が見込まれ、志賀高原の玄関口としてふさわしい場所に生まれ変わったと思います。最近は小さなお子さんを連れたご家族や、写真愛好家の方々が多く訪れています。志賀高原はアクセスもよく、車からニッコウキスゲなどの高山植物を楽しむこともできるので、もっと多くの人に志賀高原を楽しんでもらえればと思っています。
さらに自然を守るための活動として、特定外来生物の除去にも取り組みました。サンバレー周辺で北アメリカ原産のオオキンケイギクという特定外来生物が確認されたため、地元のガイド組合の皆さんのご協力で除去作業を実施しました。また志賀高原には、希少猛禽類が利用している環境があります。多くの猛禽類は生態系の上位にいる種であり、言い換えれば志賀高原は、そういった希少猛禽類が利用できるだけの基盤がしっかりしている地域だといえます。土壌の中の微生物から始まる、複雑に絡み合った生態系のピラミッドがきちんと形成されている。これはこの地に暮らす人たちが、自らの力で成し得たことです。それぞれが自然と共に生きようと地道に活動してきたからこそ、志賀高原は人と自然が共存できる稀有な場所になったのだと思います。
この歴史を踏まえた上で、環境省では現在、志賀高原の管理運営計画の見直しを行っています。地元の方たちのご意見を聞きながら、直接の担当者として日本を代表する志賀高原の「これから」に携わらせていただいていることに誇りとやりがいを感じています。10年後、20年後の志賀高原が、自然と人が美しく共存し合い、良い循環を巡らせる姿を思い描きながら、今、この瞬間に自分ができることをすべてやっていきたいと思います。