皆さんは「働き方改革」という言葉を耳にしたことがありますか。
誰もがイキイキと働ける社会をつくるために
私たち一人ひとりが、「働くルール」を知ることで、
雇用する側もされる側も気持ちよく働ける環境づくりを目指しましょう。

Q. 子どもを授かったのですが、切迫流産で入院になってしまいました。上司の営業課長から、しつこく「赤ちゃんのために退職しては」と言われています。長く休まなくてはならないし、仕事は続けられないのでしょうか。

A. 男女雇用機会均等法第12条・13条では、「事業主は、妊娠中・出産後の女性労働者が保健指導・健康診査を受けるために必要な時間を確保し、医師等による指導事項を守ることができるよう必要な措置を講じなければならない」としています。定期診査の受診はもちろん、医師に「むくみが強いので勤務時間を短縮したほうがよい」などの指導を受けた場合、会社に申し出て必要な措置をお願いすることができます。病院で「母性健康管理指導事項連絡カード」に記入してもらい会社に提出しましょう。ほとんどの母子健康手帳に様式が記載されている他、厚生労働省のホームページからダウンロードすることもできます。
 質問者さまは医師から「切迫流産のため入院が必要」と指導され会社に申し出たと思いますので、会社は入院のための休業という措置をとらなければなりません。また、それを理由に退職を促すことは、「妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」に該当する可能性があります。
 第11条の2では、「事業主は、職場における妊娠・出産等に関するハラスメントを防止するため、雇用管理上必要な対策をとらなければならない」としています。上司が制度の利用を取り下げるよう言った場合、1回でもハラスメントに該当します。また、同僚の場合でも、繰り返し、または継続的に言われた場合ハラスメントになります。
 質問者さまの場合、権限のない上司から、繰り返し退職を要求されています。本人の意向を汲むことなく退職を求めることはハラスメントに該当しますので、会社の人事、総務へ相談することをお勧めします。会社はこれらのハラスメントに対して適切な措置を講じる義務があります。また、会社が雇い止めや業務の取り上げなどの不利益な扱いを行うことも、第9条3項で禁止されています。会社としてこれらを行った場合は法的に違反となる可能性がありますので、労働局までご連絡ください。
 なお、育児休業取得中の業務体制を見直すために状況や制度取得の期間を確認したり、体調の悪い妊婦に対して、安全配慮等の観点から休業の意向を確認するなどの言動は、客観的に見て業務上の必要性に基づくものであるため、ハラスメントには該当しません。

Q. 子どもを出産し、1歳になる5月末まで育児休業を取得する予定です。会社から「4月からの新規採用を取るので、もう机はない」と言われてしまいました。最近は2歳まで育休が取れるようになったと聞いたのですが。

A. 妊娠・出産に伴って取得できる休業制度は、労働基準法第65条により定められた、産前・産後休業(出産予定日の6週間前から産後8週間まで)と、育児・介護休業法第5~9条により定められた、育児休業制度があります。
 育児休業は、「労働者が原則として1歳に満たない子を養育するための休業」です。育児・介護休業法第10条では、「事業主は、労働者が育児休業の申出をし、または育児休業をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」としています。
 質問者さまの場合、子どもが1歳になるまで育児休業を取得する権利があります。また、6月から仕事に復帰する際に、「4月からの新規採用」は、復帰できない理由にはなりません。人事、総務に確認の上、「6月に来ても居場所はない」「4月に復帰しなければ辞めてもらう」等の言動があった場合は、労働局までご相談ください。
 また、2歳までの育休取得については、近年の待機児童問題に対応するものです。1歳の時点で保育所に空きがなく預けることができない場合、1歳6ヶ月を上限に育児休業を延長することができます。さらに1歳6ヶ月に達した時点でも保育所に入れないなど一定の要件を満たす場合、2歳まで育児休業を取得することができます。育児休業の基本は1歳までとなっていますので、保育園への申し込みを忘れた、入れたい保育園に入れなかった、もっと子どもと過ごしたい等で取得することはできませんので注意してください。
 この制度とは別に、「パパ・ママ育休プラス」制度を利用して両親双方が育児休業を取得した場合、後から取得した方が最長1年間、子どもが1歳2ヶ月になるまで育児休業を取得することができます。この制度は父親の育児参加を促進することを目的としています。お母さんが仕事復帰してすぐは、子どもも親も急激な生活の変化に不安になることも多いと思いますが、そんな時、お父さんが育休を取っていれば安心して職場に復帰することができます。最近では、父親の育休取得に積極的な企業もでてきましたので、ご夫婦で相談してみてください。
 仕事復帰後は、仕事と子育ての両立が始まります。ここからが本当に大変かもしれません。育児・介護休業法では、仕事と育児の両立をめざす皆さんのために、短時間勤務制度や所定外労働の制限、時間外労働や深夜業の制限、子どもの看護休暇など、さまざまな制度を定めています。これらの制度を上手に活用しながら、自分のキャリアを諦めることなく、夫婦一緒に楽しみながら子育てができるといいですね。

(2019年4月号掲載)

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