• 松代という地域全体で
    真田の歴史を守り
    伝えていくことが
    自分の使命だと思っています。

      • 真田宝物館
        学芸員

        降幡 浩樹

        Hiroki Furihata

      • 松代文化施設等管理事務所
        真田宝物館
      • 長野市松代町松代4-1
      • 9:00~17:00(入館16:30)
      • 毎週火曜日(祝日の場合は開館)・館内消毒期間
      • 026-278-2801
      • http://www.sanadahoumotsukan.com/

歴史を伝える人になるために
学芸員を志して。

 歴史に興味を持ったのは、小学生の頃でした。岡谷市出身なのですが、当時の担任が歴史や発掘の好きな先生で、自分たちをよく発掘現場に連れていってくれたんです。勉強の一環だったと思いますが、土器など拾えると意味もわからずただ嬉しくて、そこからどんどん歴史に傾注していきました。ただ、自分は教科書に載っているナショナルヒストリーよりも、教科書に載っていないローカルヒストリーの方に興味があったんです。誰かが伝えないと途絶えてしまう「歴史」を守りたい。埋もれてしまいがちな「歴史」を伝える人になりたいと、学芸員を志しました。
 真田宝物館の学芸員になったのは、資格を取って大学を卒業してから2年後のことです。学芸員は門戸が狭いため、いつでも採用があるというわけではないので、自分の出身県で学芸員になれたことは、良い縁をいただいたと思っています。
 学芸員の重要な仕事のひとつに、資料の保存と管理があります。真田宝物館には真田家由来の資料が6万点以上もあるのですが、着任した当時は大名道具というものをさわった経験もなく、先輩に付いて一つひとつ、資料の取り扱いや展示の仕方を覚えていきました。初めて甲冑を扱ったときは手が震えましたね。歴史の重みと、それを守り、後世に伝えていくことの責任を痛感しました。

これからの博物館は
地域との連携、協力が不可欠。

 松代は、元和8年(1622)に真田信之が上田から移封して初代藩主となって以降、10代にわたって真田家が治めていました。上田から移る際に家臣をはじめ商人なども一緒に移り住んで城下町として発展した松代は、廃藩後も現在に至るまで、その子孫たちがいまだ多く暮らしています。時代の変遷の中、城下町の形を大きく変えずに暮らしと密着したかたちで、今もかつての藩主と親密に繋がりがあるというのは珍しく、松代という土地ならではだと思います。
 このような歴史的背景もあり、松代の方々の真田家への思い入れは強く、真田の歴史を後世に伝えていくサポーターとして、さまざまな形でご協力をいただいています。これからの博物館は、地域との連携、真田ファンとの連携、研究者との連携など、多様なネットワークを活用できるか、が鍵になると考えています。町全体で人やモノ(資料)の輪(和)を大事にし、歴史を伝えていく、その拠り所として真田宝物館があるという姿が望ましい。町全体が活性化するためにも、魅力ある展示を企画し、多くの方に松代を訪れてもらいたいと思っています。
 今年は6月から、「真田×刀」という特別企画展の開催を予定しています。長篠の戦で実際に使われ、刃こぼれのある重要文化財の「青江の大太刀」や徳川家康から拝領した「吉光の短刀」(長野県宝)など、真田家の歴史を物語る重要刀剣はもちろん、かつて真田家が所蔵していた名刀を里帰りさせるなど、今回初めて展示することが叶った刀剣も含めて、約50口を展示する予定です。合わせて江戸時代、これらの刀がどのように管理されていたのかについても展示します。
 会期は、前期が6月29日(土)から8月19日(月)まで。後期が8月21日(水)から9月23日(月・祝)までを予定しています。料金は大人600円、小中学生200円となっています。刀剣ブームの昨今、若い方にもご来館いただき、刀剣を通して歴史をひも解く楽しさを感じていただければと思います。
 松代地域にも現在、世代交代の波が押し寄せています。歴史の生き証人である資料を失うことがないよう、今まで以上に地域と連携し、真田の、そして松代の歴史を後世に残していきたいと思います。この地に脈々と流れる「歴史」を、地域の皆さんとともに掘り起こし、守り、情報発信していくことが、地域の活性化にも繋がると信じています。

(2019年4月号掲載)