• 私たちは、生きている限り、日々誰かと会い、何かを成しています。
    その時々で、自分でも思いも寄らないことに巻き込まれたり、
    大きな壁が立ちふさがることもあるでしょう。
    そんな時に、法律という視点を知っておくことで自分を守ることができます。
    夜明けの翼法律事務所の板谷健太郎先生にお話を伺いました。

遺言は「遺書」ではありません

 最近は、相続税の増税(基礎控除額の引き下げ)に伴って遺言書を作成する方が顕著に増加しています。一方、「縁起が悪い」といって遺言書の作成を躊躇している方々もおられるようです。  しかし遺言とは、「遺書」ではありません。ご自分の最終意思を尊重してもらうために残しておくものであり、終末医療の意向と同じ範ちゅうにあります。また、万が一のときに家族が困らないようにするという意味では生命保険に似ています。  アルフォンス・デーケン名誉教授は、講演会で「厚生労働省の統計によると、日本人の死亡率は何と100%なのだそうです」とユーモアを交えて話されたといわれています。自分が死ぬことなど想像したくないのは皆同じですが、 この世に生を受けた人間は誰もが死んでゆきます。遺言はいつでも撤回・変更できるのですから、元気はつらつで意思が清明なうちに、ご自分の死と向き合って遺言を作成しておきましょう。それは生き方を見つめ直すことにもつながるはずです。

もし遺言がないと?

  遺言がない場合には、亡くなった方(被相続人)の遺産は民法の法定相続分にしたがって以下のように相続されます。
 たとえば、被相続人に配偶者と子がいれば2分の1ずつ相続します。子が複数いれば、その2分の1をさらに分けます。配偶者がいなければ、子が全部相続します。
 子がいなかった場合は少し複雑になってきます。「直系尊属」とは、自分の父母や祖父母など、自分より先の世代の血族をいいます。「代襲相続」という制度がありますから、子が死亡していれば、子の子が、子の子が死亡していれば、子の孫が相続します。そのため、子どもやその子、孫がいずれもいないときに、直系尊属が相続人となります。その場合には、配偶者は3分の2、直系尊属は3分の1となります。直系尊属が誰もいないときには、兄弟姉妹、兄弟姉妹が死亡していれば、兄弟姉妹の子が相続します。兄弟姉妹の相続の場合は、配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1です。
 お察しのとおり、「妻と子2人」などの単純な相続であればまだしも、相続関係が複雑になると、法定相続人を探して連絡を取るだけでも一苦労します。
 そして、遺産が法定相続分ですっきり分けられる金銭や預金だけとは限らず、不動産などもあると、分け方について遺産分割協議をする必要が出てきます。協議の中では、特別受益(相続人の中で特定の人だけが資金の援助を受けていたなどの場合)や寄与分(相続人の中で被相続人の財産の維持や増加について特別の寄与をした場合)についての主張が出てくることもあり、兄弟姉妹間の積年の恨みや、それぞれの配偶者(被相続人の義理の子)の希望なども出てきたりして、遺産分割協議が泥沼化することもあります(いわゆる「争族」)。
 これを防ぐためには、遺言が効果的です(それ以外に、「家族信託」という方法もありますが、ここでは省略します)。加えて、遺言執行者を指定しておくと安心でしょう。

遺言の方法

 大きく分けて、ご自分で作成する方法と公証人に作成してもらう方法があります。

自筆証書遺言

 全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押せば完了します。パソコンやワープロではなく、ご自分で筆記する必要があります。簡単で費用がかからず、遺言の内容を秘密にできるという利点がありますが、紛失、偽造、変造の危険があります。内容が曖昧な場合には有効性が問題になりますし、相続人間で紛争の種になることもあります。また、被相続人の死後、ご遺族などが家庭裁判所の検認手続を経る必要があります。
 もっとも民法の改正で、自筆証書遺言については法務局で保管できる制度の創設が検討されており、その場合、家庭裁判所の検認手続も不要にするなど、利便性を高めることが検討されています。

公正証書遺言

 証人2人以上の立会いのもとで遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がそれを筆記して遺言者及び証人に読み聞かせるなどし、遺言者及び証人が各自署名し、印を押し、最後に公証人が署名し、印を押すことによって完成します。
 公証役場に保管されますので、紛失、偽造、変造のおそれはなく、家庭裁判所の検認は不要です。ただし手間と費用がかかり、証人や公証人に内容が知られることになります。

(2018年6月号掲載)

夜明けの翼法律事務所

●代表者  弁護士 板谷 健太郎(いたや けんたろう)
 長野県弁護士会所属 弁護士登録番号32683
 弁護士登録平成17年10月4日 司法修習第58期

●業務内容  法律相談 法律事務一般 裁判代理

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