• 「働き方改革」という言葉を聞いたことがありますか。
    あまりにも大きな課題すぎてとらえどころがなく
    どこか人ごとのように感じていませんか。
    実は私たち一人ひとりの意識にも関わってくる
    「働き方」の今後について長野労働局の石田局長に伺いました。

「働き方改革」とは

 最近、新聞やニュースで耳にすることがある「働き方改革」。これは安倍政権が打ち出した経済対策のひとつであり、これからの日本の「労働」に対する視点そのものを変えていく大きな取り組みです。長野県でも昨年、行政だけでなく民間も交えた「長野県働き方改革・女性活躍推進会議」を立ち上げて、『信州「働き方改革」共同宣言~活き活きと働き人生を楽しめる長野県を目指して~』を宣言し、働き方を変えていくためのさまざまな取り組みを始めています。

なぜ今、「働き方」を 改革するのか

     日本は今、少子・超高齢化時代を迎え、国民の4人に1人は65歳以上となっています。日本全体の人口は減少の一途をたどり、15歳~64歳までの生産人口は、平成7(1995)年時には8、726万人いましたが、平成27(2015)年時点で8、000万人を割り、40年後には5、000万人まで減少するといわれています(国立社会保障・人口問題研究所調べ)。
現時点で、既に企業が人材を確保するのが大変だといっているのに、そう遠くない40年後に、約3、000万人もの労働力がなくなる可能性が高いのです。
 日本経済を揺るがすこの問題を解決していくためには、AIをはじめとする技術革新を進めると同時に、「働き方」そのものを根本的に変えることで、労働力を確保していかなければなりません。そのための「改革」なのです。

「働き方」を変えるために まず、考えるべきこと

  では、具体的にはどのような動きが起きているのでしょうか。
 今、まず取り組むべきは、「働き手を増やす」ために、「多様な働き方を新たに構築する」ことだといわれています。
 これまでは「働く」といえば、正社員か非正規社員(契約社員・パート・アルバイトなど)の大きく分けて2つのカテゴリーしかありませんでした。そんな中、子育てや介護、病気や高齢などで、今まで通り正社員として働きたくても働けなくなった人たちが大勢います。そういった人たちが安心して働ける「多様な働き方」を用意できれば、もっと多くの人が働き続けることができるようになるはずです。

「多様な働き方」を推進するもうひとつの理由

  「多様な働き方」を推進するもうひとつの理由に、長時間労働の問題があります。過労死や自殺など、最近も大きな問題としてメディアに報道されています。このような働き方では心身ともに充実して働くことはできません。仕事と家庭の両立も難しいでしょう。それでも無理して正社員として働くのは、非正規社員との待遇に大きな格差があるからです。この格差を埋め、正規・非正規ではなく、「多様な働き方」で正社員でもライフステージの変化や心身の状態に対応しながら仕事を続けられるようになれれば、結果的に企業も労働力の確保ができるようになると考えられています。

「多様な働き方」を支援する 制度も整いつつあります

 そんな「多様な働き方」を促進するために、法的な制度も整いつつあります。
 育児休業に関しては、10月1日より最長で2年まで延長することができるようになりました。出産、子育てをしながら働く女性を制度の面から支援しています。復帰後の子の看護休暇や時短勤務等も企業内に浸透しつつあります。
 また非正規として働いてきた契約期間が5年を超えて更新された場合には、労働者側が申し込むことによって期間を定めない「無期労働契約」に転換することもできるようになります(平成25年4月1日より対象)。
 さらに「同一労働同一賃金」ガイドライン案が政府により策定され、正規・非正規の格差を埋めていくよう企業に働きかけをしています。現行の労働契約法(20条)、パートタイム労働法(8条・9条)等でも、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差は禁止されています。
 長時間労働については、法改正による時間外労働の上限導入に向けて議論が進んでいます。現時点でも、基本的には1カ月45時間、1年間で360時間を上限にするよう、厚生労働省が定めています。

仕事を選ぶとき 「働き方」を基準にしてみよう

 私たちは仕事を探すとき、仕事内容はもちろんですが、どうしても給料や会社の規模に目がいってしまいがちです。けれどこれからはもう一歩踏み込んで、その会社がどのような働き方を推奨しているのか、離職率や有給休暇の取得率、育児休業の取得率などをひとつの指針として確認しましょう。最近ではこのようなデータを開示している企業も多くなってきました。
 長野労働局のホームページでは、仕事と子育ての両立を支援する「くるみん」「プラチナくるみん」の認定企業や、若者の採用・育成に積極的に取り組んでいる「ユースエール」認定企業を確認することができます。

「働き方」を変えるのは 私たち一人ひとりです

 「多様な働き方」を推進するためには、制度の整備ももちろん大切です。また、企業の経営層が変革を意識しなければ難しい問題でもあります。でも、だからといって「会社のトップが動かないから」「法制度が確立されないから」と諦めていませんか。「働き方改革」が進まない原因のひとつは、私たち一人ひとりの固定観念のせいかもしれません。どのように働いて、どのように生きるかを決めるのは自分自身です。一人ひとりの意識が変わるとき、「働き方」そのものが変わるかもしれません。

(2017年11月号掲載)

長野労働局

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