大正時代の活動弁士を描いた映画『カツベン!』
周防正行監督がPRのため、長野にやって来た!

7月18日「周防正行の日本全国しゃべくり道中」にて、13番目の地・長野県を訪れた周防監督

大正時代、日本の映画は、活動写真にあわせて音楽と共に独自の“しゃべり”で物語を作る「活動弁士」通称“活弁”が大活躍。日本独自の文化“活弁”を描いた映画『カツベン!』が今年12月13日(金)の公開にあたり、監督の周防正行さんが7月18日に「久しぶり」という長野市を訪れ、インタビューに答えてくれた。

―活動弁士をテーマにしようと思ったきっかけは?
 「活動弁士という存在を知っている人が少ないと感じ、僕自身もあらためて、活動弁士の説明で映画を観ることがどういうことだったのかを考えたことがなかったです。でも日本映画の発展を考えても活動弁士抜きには語れません。それを、多くの日本人と世界中の人に伝えたかったんです。そこに至った理由は、『それでもボクはやってない』から助監督をやっている片島章三さんが書いた脚本がとても面白くて。今回初めて、第三者が書いた脚本になります」
―その脚本に監督が付けたすことなかった?
 「付けたすことはなかったですが、取材はしました。無声映画はよく見ていたけれど弁士付きの映画は見ていなかったから、今の弁士さんたちの説明で映画をたくさん見ました。大正時代の残っている音源はなかったけれど、当時の弁士たちが後々、こんな感じだったと吹き込んだものは幾つか残っていて、それを聞きました。また劇中のサイレント映画も自分で撮りました。昔の映画をかなり勉強させてもらいましたね」
―3人の活動弁士による指導もあったようだが、彼らから感心したことや影響を受けたことは?
 「絶対違うと思ったのは彼らは、100年以上の映画の歴史を知っているということです。そして弁士の方達はもともとあった作品の意図を考えて、そこから逸脱しないようなしゃべりをしようと、作品を尊重します。でも明治時代後期から大正時代にかけての弁士は、“活動写真は自分のしゃべりの素材だ”、“俺のしゃべりで面白くしてやる”という感じでした。なので、弁士の“語り”を聞きたいという人が多かったのです。落語や浪曲、人形浄瑠璃、紙芝居に至るまで、日本人の「語り芸」は今も親しまれています。日本人の映像文化は、ヨーロッパやアメリカともちょっと違っていて、無声映画なのに「言葉」や「台詞」が重要だったんだなとあらためて思いました」
―豪華キャストについて。
 「竹野内豊さんと音尾琢真さんは僕が東映で仕事をしなかったら実現しなかったキャスティングです。いい意味で全くイメージを覆されました。竹野内さんに関しては、僕がああいう演技を要求したというよりは自由にお願いをしました。あのとぼけた感じというかなんともいえない間を外した感じがすごいチャーミングでしたね。僕が竹野内さんの役作りに乗っかって発展させてもらった感じです。音尾さんもシナリオ上ではもうちょっと悪いヤツなのに、いくら悪いことやっても憎めず愛嬌がある。井上真央さんは、この役をよく引き受けてくれたと思います。ムードや空気がちゃんとあって本当に有り難かった。撮影カットを初めて全て使いました。竹中直人さんはいつもながら撮影現場の雰囲気を作ってくれて、若い役者さんが伸び伸びとできる環境を作ってくれる。それが本当に有り難いですね。キャスティングは面白いです、シナリオが一気に膨らんだ感じがしますね」

《取材後記》今作の制作にあたり、100年以上に渡る映画の歴史を調べ、自らの映画人生までも振り返る機会になったと周防監督。熱心に語るその姿は、永遠の「映画青年」という言葉がぴったり。気付くと、「映画愛」にあふれた“活動弁士・周防正行”の語りに引き込まれていました。

■12月13日(金)公開『カツベン!』
監督:周防正行 脚本・監督補:片島章三
出演:成田凌、黒島結菜、
永瀬正敏、高良健吾、井上真央、音尾琢真、竹中直人、渡辺えり、小日向文世、竹野内豊 ほか

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